写真
加賀電子 下山和一郎 専務取締役
 「(CIOという仕事は)ほんと報われなくて大変なんですよ」と大きな声で笑うのは電子部品商社大手・加賀電子の下山和一郎専務 管理本部長 財務担当だ。同社の人事、財務、システムなどの間接業務を束ねている。元々は営業畑だったが、加賀電子の主な情報システムの開発にはすべてかかわってきた。それだけにCIO(最高情報責任者)の仕事の重みを誰よりも痛感している。

 加賀電子の2006年3月期の売上高は2577億6400万円。電子部品の商社として出発したものの、多角化を進めた結果、現在は、商社機能としては部品だけでなく完成品を加え、さらにメーカー機能も持ってきた。それぞれに合わせて販売や生産を管理するシステムを作ってきた。

 部品商社としての経営を助けてきたのが「KINGS」シリーズ。「KINGS-I」(1983年7月稼働)、「KINGS-II」(95年4月稼働)、「KINGS-III」(2000年3月稼働)と続いてきた。部品ではなく完成品を扱うようになると販売管理システム「QUEEN」(95年11月稼働)を構築した。メーカー機能を有するようになると、MRP(資材所要量計画)を達成するシステムとして「JACK」が97年4月に稼働。下山専務はそのすべてのシステム構築にかかわってきた。

 下山専務は財務も担当しているため、会計システムの構築にも積極的だ。2001年にはCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)導入にも取り組んだ。共通の会計システムも2003年10月に完成した。「売上高が200億円のころの経理部員は25人。2800億円を見込む現在は四半期で開示しているのに19人と減っている。関係会社の数も当時の2つから今は30以上になっている。それでもシステムにより恩恵というのは見えづらい。うまくやって当たり前だから」と下山専務は語る。

 CIOという仕事の大変さを嘆きながらも「やりがいもあるし、誇りも持っている」とも話す。後進の育成にも意識的に取り組んできた。システムの重要さは誰よりも理解しているからだろう。

PROFILE of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
 システムに関するミーティングはすべて議事録にして(塚本勲)社長に提出しています。システムについてだけ定期的に話し合うことはしていませんが、頻繁に会って話す機会はあります。

 コミュニケーションにおいて大切なのは、大切なポイントを分かりやすい言葉で話すことです。私は間接部門を担当していますが、財務やシステムの分野には専門用語が非常にたくさんあります。しかし、社長や他の役員にそれらの難解な用語で話しても活発な議論は生まれません。全員が理解できる言葉を使うように腐心しています。

 もう1つはスピードですね。たとえ小さな問題でも発生したらすぐに連絡を取ります。「じゃあ次の役員会議のときにでも話しましょう」ではだめです。携帯電話もメールもあるのですから。

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
 情報システムとは会社の哲学です。システム開発とは哲学の具現化です。パッケージを導入してそれで終わり、ということはないはずです。どうしてもカスタマイズが必要になってきますが、最初の段階から深く加賀電子の哲学を理解してもらわないとテストランを始めるころには次々に問題が出てきます。「売り上げ」、「在庫」、「回収」といった言葉でも、一般的な定義と加賀電子での定義が微妙に異なることがあるのです。こういった言葉をすべて理解してもらわないとボタンの掛け違いのようにシステム開発では、後々不都合が出てきます。

◆普段読んでいる新聞・雑誌・業界紙
日本経済新聞
朝日新聞
週刊ダイヤモンド
CIOマガジン

◆最近読んだお勧めの本
木村剛「和魂米才の発想法—日本流でも米国流でもない企業経営」(ナレッジフォア)
ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」(角川文庫)
浅田次郎「椿山課長の7日間」(朝日新聞社)
 近所の本屋さんにその店でよく売れている本を毎月4~5冊持ってきてもらっていますので、ジャンルはまちまちです。

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
グーグル
NBonline
グーグルはずいぶん前から使い込んでいます。

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
銀行や証券会社が主催する財務も担当しておりますので会社法の改正などについてのセミナーにはよく行きます。

◆ストレス解消法
 おいしいものを食べに行くのがストレス解消ですね。洋食が多いです。ワインも飲みます。
 あとはゴルフもたまにやりますよ。