「Googleデスクトップ」や「Windowsデスクトップ・サーチ」といったインデックス・ベースのデスクトップ検索機能は,パソコン内のファイル検索を飛躍的に高速化するありがたい機能だ。しかし,1つだけ弱点がある。インデックス(索引)が完成するまで,完全な検索ができないことだ。記者は,これらの機能をOSの標準にするなら,ユーザーに混乱を起こさない配慮が必要になると感じている。体験を交えて,この問題を説明させて頂きたい。

 記者は現在,レビュー記事を執筆するために「2007 Microsoft Office system(Office 2007)」のベータ版を試用している。その中に含まれる電子メール・ソフト「Outlook 2007」を起動して気になったのは,「Windowsデスクトップ・サーチ」のダウンロードを促される点だ(図1)。

図1●Outlook 2007はWindowsデスクトップ・サーチのダウンロードを促す


 調べてみると,Outlook 2007には個人用メール・ボックスを検索するために,2種類の検索技術が搭載されることが分かった。1つは,従来からある検索機能(その都度全データをスキャンする)と,Windowsデスクトップ・サーチを利用する「簡易検索」と呼ばれる新機能である。現在でも,Windowsデスクトップ・サーチ(配布されているプログラム名称は「MSNサーチ・ツールバー with Windows デスクトップ・サーチ」)をインストールすると,Outlookの画面にWindowsデスクトップ・サーチの検索窓が追加される。Outlook 2007では,これが標準機能になる。

既存の検索機能はあまりに貧弱

 従来からあるOutlookの検索機能には,致命的な弱点があった。それは,検索の度に全データをスキャンするため検索に時間がかかることと,古いデータから順番にスキャンするので最新のデータをすぐに発見できないことである。つまり,従来の検索機能では,新しいメールよりも古いメールの方を優先して表示していた(古いメールの方が情報価値が低いのに)。Windowsデスクトップ・サーチなら,こうした既存の検索機能の弱点を克服できる。

 しかし,Windowsデスクトップ・サーチにも,「インデックスが完成するまで,完全な検索ができない」という弱点がある。実際,Outlook 2007の指示に従い,最新のWindowsデスクトップ・サーチ・モジュール(ベータ版のバージョン3)をダウンロードして,このモジュールを使う「簡易検索」に検索のモードを切り替えたところ,しばらくOutlookでメールを検索できなくなってしまった。

Outlook 2007の画面ではインデックス作成状況を把握できない

 もちろん,インデックスがなければ検索ができないことは,インデックス・ベースの検索機能にとって弱点というよりは,「当たり前」のことである。そのため,GoogleデスクトップもWindowsデスクトップ・サーチも,インデックスの作成状況を管理画面で確認できるようになっている。また「インデックスが未完成なので,完全な検索結果ではありません」という警告画面なども表示される。

 しかし,Outlook 2007の簡易検索の画面では,インデックスの作成状況や,不十分な検索結果であることが確認できなかった。これらはインデックス作成後は不要になる画面であるが,無いとユーザーを混乱させる恐れがある。製品版のOutlook 2007では,この点を是非とも改善してもらいたい。

OSの基本機能になるインデックス・ベースの検索

 また,インデックス・ベースの検索機能をより普及させるのであれば,ユーザーに対する啓蒙活動を強化するべきだとも感じた。現在,GoogleデスクトップやWindowsデスクトップ・サーチを使っているのは,わざわざそれらをWebサイトからダウンロードした限られたユーザーだけである。プログラムのインストール時に「インデックスの作成が必要です」といった画面が表示されるので,「インデックスが作成するまで完全な検索機能が使えない」ということも,きちんと理解しているだろう。

 しかしWindows Vistaでは,Windowsデスクトップ・サーチがOSの標準検索機能になる。またWindows 2000/XPでOutlook 2007を使うユーザーも,ほとんどがWindowsデスクトップ・サーチをインストールするようになるだろう。つまり,インデックス・ベースの検索機能が標準になり,それが何かをよく理解していないユーザーも使用するようになる時代が,すぐそこまで迫っている(Macの場合,2005年4月に発売されたMac OS X 10.4に「Spotlight」というインデックス・ベースの検索機能が搭載されている)。

 これからは,新品のパソコンを買ってきて古いパソコンからデータを移行したら,検索用インデックスを作成するために「電源を入れたまま新品パソコンを一晩寝かす」のが常識になるかもしれない。そうでなければ「パソコンを買ってきてから1~2日は検索機能を使わない」が常識になることだろう。メディアとしても,「パソコンのスペックやデータの量/種類と,インデックス作成時間の関係」といった情報の発信が必要になるのではないかと感じている。