USENが提供するブロードバンド動画配信サービス「GyaO」の視聴登録者数が,6月17日に1000万人を超え,ほかを圧倒している。ただ,GyaO事業自体は,コンテンツ調達などの先行投資の結果,赤字を抱えている状態だ。USENでGyaO事業を担当する高垣佳典取締役コンテンツ事業本部長に,現状と今後を聞いた。

(聞き手は和田 勉=ジャーナリスト


---GyaOの視聴登録者数が1000万人を超えましたが,この数字をどう見ていますか。また,視聴時間は延びているのですか?

 1000万人を開始から14カ月で達成できました。ほぼ予定通りでしょう。タダ(無料)ですからね。今後は,「メディアとしてどれだけ見られるか」にこだわって,視聴者数を延ばして行きたいです。1000万人突破は,そのための区切りということです。

 視聴時間は現在,月1500万時間くらいです。今,意識している数字は,2000万時間です。期近に達成したいと考えています。

 2000万というのは,シンボリックな数字なんです。日本のブロードバンド世帯は,2000万世帯と言われています。ブロードバンドはオフィスにも引いているのでイコール人口にはならないですが..。また,1都3県の地上波テレビ受信がおよそ2000万世帯です。月1時間見ると2000万時間で,わりと意味がある数字だと思っています。

 (GyaOの月間視聴2000万時間は)そんなに時間がかからずに達成できるんじゃないかという気がしています。

---コンテンツは急速に充実しているように見えますが。

 数としては増やしているわけではありません。USENが持っている番組は,ショウタイム(楽天と共同の有料動画配信)を含めて3万番組くらいです。GyaOの編成としては,300タイトルで,番組数では1000を超えたところです。昨年7~8月ころに1000で編成して,それからずっと同じくらいに維持しています。1000というのが,我々の分析によると最適な数字です。CMを見てもらわないといけないので,あまりたくさんあってもだめなんです。

 ニュースはわりと一生懸命作っています。事件ものなんかはTBS系列から買っていますが,自主制作の番組も作っています。僕は「NET NEWS」がお気に入りですね。その日にネット上で起こった事件を報道する番組で,うちのスタッフが取材・調査して制作しています。今日の楽天で何が一番売れたとか,ヤフーオークションで何が落札されたとか,紹介しています。古瀬絵理アナが,---「スイカップ」で有名になった彼女を起用してから視聴者が増えているのですが---まじめにニュースとして報道しています。

 GyaOは,テレビとWebの間のメディアにしたいと思っていました。個人的な心意気としては,「Webテレビって,こういうことなんです」ということが示せたと思います。このほかでは,ドラマはオリジナルの自主制作があります。音楽では上質なライブがあって,テレビ局が収録したいけれど手が回らないようなものをGyaOだけが収録すれば,オリジナルですし。

---大量にコンテンツを買ったり,自主制作したりしているために,GyaOは大きな赤字になっていると言われていますが。

 僕は,制作予算内で抑えていますから(ビジネスとしての問題はない)。新聞などで報道されているように,作りすぎで赤字になって大変ということはありません。

 ドラマを作ろうとすれば,キャスティングによっては1億円くらいかかりますねとか,アニメだったら30分いくらの定価みたいなものがあったりします。ただ,海外のコンテンツをどこから買うのか,まとめて買うのかなど,工夫をしています。

 当社には,ショウタイムあり,携帯での配信あり,DVDパッケージ化の機能もある。コンテンツの生涯収支という意味では,GyaOで流した後,ペイ型のショウタイムでも配信し,DVDにしました,この全体で儲かったのかという話になる。色々な可能性を考えていて,グループのGAGA(ギャガ・コミュニケーションズ)の映画配給も考慮している。コンテンツの収支で黒字が出るのは長くても3年くらいでしょう。

 だから,今のGyaOだけを見て,コンテンツ代とシステム代がいくらで,CM収入がいくらだから赤字だ,というのはあまり意味がないと思っています。黒字にしようと思えば,GyaOはいつでも黒字化できます。例えばコンテンツを100で買いました。ショウタイムに売る,携帯配信に売る,などを含めて買っているので,GyaOの負担額は,10なら10でいいわけですよ。10にすれば,GyaOだけを見たら黒字にできます。