LPOという言葉をご存知だろうか。最近日本のネットマーケティング界で、にわかに脚光を浴びている用語である。インターネット先進国の米国で生まれた考え方で、Landing Page Optimizationの頭文字をとってLPOと呼ばれるが、日本語で平たく説明すると、広告のリンク先ページやそのデザイン、さらにページ内の原稿などを広告に合わせて最適化する試みのことを指す。

 このLPOは、ブランディングや商品販売目的でせっかく広告を出稿したのに、リンク先ページが広告とのミスマッチを起こしているがために、訪問者がすぐにサイトから離脱してしまうという、不幸な状況を改善する狙いがある。

 簡単な例として、パソコンを買いたい人が検索サイトで「パソコン 購入」というキーフレーズで検索した場合のことを考えてみたい。もし検索結果に表示された広告をクリックした時に大手家電量販店のトップページがリンク先になっていたらどうだろう。ユーザーはすでにパソコンを購入しようと決めているのに、取り扱い商品の一覧があるトップページが表示され、そこからパソコンの購入ページまで自力でたどり着かなければならない。果たしてこの場合、ユーザーは本当にこのサイトでパソコンを購入するだろうか。確率論から言えば、おそらく可能性はかなり低くなるだろう。実はこうした事例は少なからず存在する。実際、ブランド名が知れわたった大企業がリンク先ページの問題で、9割近くもの訪問者を離脱させていたという事例もあるぐらいだ。

 ところで、このLPOの必要性を考える上で肝心なのが、コンバージョン率という指標である。広告をクリックしてサイトに来訪したユーザーのうち、どのくらいの割合がコンバージョンに結びついているかを示す指標であり、「コンバージョン数÷クリック数」で計算される。コンバージョン率が高いほど、訪問者の多くがコンバージョンに結びついていることになり、逆に低い場合は何らかの問題により、訪問者がコンバージョンに至っていないということが言える。そして、このコンバージョン率を顧客の獲得単価と絡めると、次のような数式も成り立つ。

「顧客の獲得単価=平均クリック単価÷コンバージョン率」

 この数式を見る限り、顧客の獲得単価を下げるためには、平均クリック単価を下げるか、コンバージョン率を上げるかのいずれかしかないことがわかる。しかし平均クリック単価は、得てして競合の入札状況など外部要因に左右されることが多い。一方コンバージョン率については、上記のリンク先ページを改善するなどのLPOの実施により十分改善が可能だ。そのため、LPOなくして、費用対効果の改善は望めないという考えが広まりつつある。

 では、具体的にLPOとは何をしたらいいのだろうか。いくつか簡単な方法をご紹介しよう。

 まず、サイト内の文章を、広告で訴求した内容と一致させること。これは広告原稿を読んで熱の高まったユーザーを、見当違いのコンテンツで冷めさせないための施策である。鉄は熱いうちに打て、ということわざにも通じるところがある。

 次に、申し込みや登録ボタンを、スクロールしないで見られる箇所に配置することも重要だ。ウェブブラウザの右端にあるスクロールバーを操作する手間は、ユーザーにとっては思いのほか面倒なもの。そのため、できる限りノンスクロールで見られる場所にリンクやボタンを配置することが必要になる。

 さらに、入力フォームで、必要以上の記入項目を作らないことにも配慮したい。あまりにたくさんの入力を求められて、面倒で途中でやめてしまったという経験は、誰しもあるものだ。また、入力項目にエラーがあった際、入力内容が全部消えてしまい、もう1度すべて入力し直さなければならないサイトというのも配慮が欠けていると言わざるを得ない。

 もちろん、本格的なLPOについてはより細かく繊細な施策が必要となるが、これらの基本ポイントを抑えただけで、顧客の獲得単価が飛躍的に改善した実例も存在する。ぜひこの機会に今一度、自社サイトのリンク先ページを見直されることをおすすめしたい。


(アウンコンサルティング コンサルティンググループ 梅澤俊雄)






 本コラムは、アウンコンサルティングのサイト 「(((SEM-ch))) 検索エンジンマーケティング情報チャンネル」に連載中の「SEM特撰コラム」を再録したものです。同サイトでは、SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。