オープンソースのIP-PBXソフト「Asterisk」に関連する製品が続々と登場しています。2006年6月5日~9日(展示会は7日~9日)に千葉市の幕張メッセで開催されたネットワーク関連の総合展示会「Interop Tokyo 2006」では,あまり目立ってはいませんでしたがいくつかのAsterisk搭載製品が登場していました。自社のIP電話サービスを使う中小企業などをターゲットに,NTT東日本やUSENの子会社であるメディアがAsterisk搭載のオールインワンIP-PBX(関連記事)を展示していたのです(写真1,写真2)。
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ただし,Asteriskはオープンソースで誰もが無償で使えるIP-PBXソフトです。メーカーから購入した製品ではなく,Asteriskを使ってユーザーが自ら構築したIP-PBXを,自由にIP電話サービスに接続できるような環境が理想です。現実には,Asteriskで構築した自前のIP-PBXは通信事業者からの認定を取得できないため,IP電話サービスに自由に接続することはできません。
そんなしがらみが,Asteriskの普及とともに取り払われようとしています。ASPの浅田高春・代表取締役CEOは,現在次のようなことを進めています。ある通信事業者は自社のIP電話サービスに対して,Asteriskそのものの接続を認めようとする態度を表明しているそうです。ただしその事業者は100チャンネル単位といった数で契約しなければならないとのこと。個人が自前で構築したAsteriskのサーバーを接続するのは難しいでしょう。
そこでASPは,同社のセンターにAsteriskで構築したIP-PBXを設置し,その通信事業者のIP電話サービスと接続。そしてSIP(session initiation protocol)やAsteriskオリジナルの呼制御プロトコルであるIAX(inter asterisk exchange)を使い,ユーザーが自前で構築したAsteriskのサーバーを,同社のセンターを介してIP電話サービスに接続できるようにすることを考えています。
このように,メーカー固有の技術に閉じていた電話の世界に,オープンソースのソフトウエアが使われるのは珍しいことのように思えますが,実は先例があります。それが携帯電話です。例えばNTTドコモの「901iシリーズ」。NECとパナソニック モバイルコミュニケーションズの製品はOSとしてオープンソースのLinuxを採用しています。とはいえ,それらのユーザーの大多数は,その携帯電話にLinuxが使われているとは思っていないでしょうし,そもそも知る必要もありません。これと同じようなことがAsteriskをきっかけにIP電話の世界でも起こりつつあるのです。
知らず知らずのうちにAsteriskを使っている――。そんな時期が訪れるとするなら,そのときはIP電話サービスとそれにひも付けられた機器が切り離され,もっと自由な組み合わせでユーザーがIP電話サービスを使えるようになっているはずです。これこそがIP電話の本当の普及期だと言えるのはないでしょうか。