===> 後編へ続く

 独立UHF局のテレビ神奈川(tvk)は,人気の高い音楽番組と連動したデータ放送や地域情報を主なサービスとして,この6月1日にワンセグ放送をスタートさせた。サービス開始と同時に有料の公式携帯サイト内にショッピング・サイトも新設し,放送内容とリアルタイムで連動するようにしたほか,着うた,コンサート・チケット,アーティストのオリジナル・グッズの販売も始めるなど,他局とは少し違ったアプローチでサービスを展開している。そこで同社の編成局モバイル・データ放送部副部長の鈴木邦彦氏に,ワンセグ放送に対する期待とサービス内容について聞いてみた。

(聞き手は隅倉 正隆=IT放送技術ジャーナリスト兼コンサルタント)


---2006年6月1日にワンセグ放送を開始されましたが,ワンセグ放送に対してどのような点に期待していますか?

 まだ整理できているわけではありません。固定型テレビ向けのデータ放送という流れの中で言いますと,我々はビジネス・ツールとしてワンセグ放送を成立させていきたいと考えています。また,投資した多額な経費は回収したいですね。

 この6月1日のタイミングで「ラビンソンつかさ」,「エレモン」,「パパラ和尚」というtvkモバイルキャラクタを用意し,目に付くようにしました。しかし,基本的には携帯サイトで全面的に展開するキャラクタですので,ワンセグ放送では全面的な登場とまでは行っていません。ただし,ワンセグ放送についても同じ携帯電話機が対象ですので,折に触れてキャラクタが登場するはずです。

図1 tvkのワンセグ放送トップ画面

 また,我々は携帯の有料サイトを展開しているので,携帯サイトの会員数を増やしていきたいという思いもあります。携帯電話機が主な対象のワンセグ放送ですから,連携させることで相乗効果が期待できると考えています。

---tvkのワンセグ放送サービスの取り組みや編成方針を教えてください。

 神奈川県のローカル放送局が行うサービスが大きな柱です。昨年4月に開始した地上デジタルテレビジョン放送の固定型テレビ向けデータ放送の流れを汲んで,県民のためのサービスを提供するのが基本方針です。

 具体的には,固定型テレビ向けデータ放送で提供しています神奈川県の市町村情報(県民に役に立つ情報,自治体データ放送)と同じ情報をワンセグでも展開しています(図1)。これが我々が考えている基本の編成方針です。

 それと,長年提供しきた音楽番組については,それなりの評価を頂いており,先ほども申しましたようにワンセグ放送サービスをビジネスとして仕立てていきたいということから,音楽を中心としたコマースを展開しています。

 ワンセグ放送を開始するにあたり,新たな負担を増やしたくないという考えを持っており,番組連動サービスを行っている音楽情報以外については,固定型テレビ向けのデータ放送コンテンツと共通化しており,効率よく流用する仕組みを用意して利用しています。

 このシステムは,6月1日のワンセグ放送開始に合わせて新しく構築したシステムですが,全ての情報を1カ所に集めて一元管理するシステムになっています。そして,集めた情報は固定型テレビ向けデータ放送,Webサイト,ワンセグのデータ放送のそれぞれに対して,フォーマットなどを合わせて編成時間に沿って出力する仕組みになっています(図2)。

図2 tvkが構築したデータ放送コンテンツ管理システム

 具体的には,ニュース,天気予報,行政情報,映画館情報などは,地上デジタルのデータ放送で提供しているものを,ワンセグ用のフォーマットに変換して提供しています。ただし,固定テレビ向けデータ放送とワンセグ放送では,表示領域が異なりますので,例えばニュースであればワンセグ放送ではニュースのリード部分だけの提供になっています。

---昔から音楽番組に力を入れていますが,今回始めたワンセグ向け音楽番組データ放送と連動するショッピング・サービスについて教えてください。

図3 tvk music showcaseの画面

 まだ,トライアルの状況です。6月1日のサービス・スタートの目玉として位置づけ,音楽番組と連動する形でCDやDVDの販売サイトへ誘導することを目指しています。我々が行っている公式携帯サイトでは,既に着メロや着うたなどの音楽ダウンロード・サービスを提供していますが,その公式携帯サイトと差別化する意味もあり,音楽ダウンロード・サービスではなく,CDやDVDの物販サイトへ誘導するようにしました。

 ちなみに,この物販サイトである「tvk music store」は,tvkの公式携帯サイト内にショッピング・サイトとして,ワンセグ放送サービス開始と合わせて6月1日にオープンしました。そして,ワンセグ放送のデータ放送からこのショッピングサイトへ誘導するようにしています。具体的には,音楽番組が放送されているときに,データ放送のメニュー画面の一番上に「tvk MUSIC SHOWCASE」というリンク・バナーを表示し,リンク・バナーをクリックすると,1次リンク(「第2回 ワンセグ放送のサービス・イメージ」の図3参照)に遷移します。その1次リンク画面には,tvkがお薦めするアーティストのリストが表示されます(図3)。

 このアーティスト・リストには,アーティスト情報を少しだけ記載しており,そのアーティストの説明を読んで気になるアーティストの名前をクリックすると,そのアーティストのCDやDVDが購入できる2次リンクの有料公式携帯サイトへ飛びます。そして,そこでCDやDVDを購入することができる仕掛けになっています。

---ユーザーが気に入ったアーティストの着メロや着うたをダウンロードしたい場合は,どうなりますか?

 説明したように,現在のワンセグ放送からのサービスとして,着メロや着うたダウンロード・ページへの誘導を行っていませんので,もしCDやDVDではなく着メロや着うたを購入したい場合は,この2次リンク先のページで戻るボタンをクリックして,tvk公式携帯サイトのトップ・ページに遷移してから着メロや着うたを購入するサイトに遷移することになります。

 ただ,ニーズはあると思っていますので,将来はワンセグ放送から番組連動/番組非連動での着メロや着うたダウンロード・サービスを提供したいと思っています。

---具体的に「ワンセグ連動型e-コマース」サービスについて教えてください。

 先に説明したように,音楽番組に関して提供しているものが「ワンセグ連動型e-コマース」です。これ以外のサービスも提供したいと考えており,現在は色々なサービスの可能性を検討している段階です。

 例えば,車の番組だとか,ファッション番組などを検討しています。ファッション番組についてはtvkでは持っていませんので,番組ごと立ち上げる必要ありますが,そういった話も徐々に進めています。

 目標としている時期は番組ごとに異なっていますが,早いものは今年の10月には開始したいと考えています。

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