写真1●Amazon.com内に新設された「Grocery」(ベータ)のトップ画面。ここで商品を選んで注文すると食料品がおなじみのロゴ入り段ボール箱で送られてくる
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写真2●現在の商品カテゴリ数は34。サイト上段の商品カテゴリのタブ上にマウスをもっていくと大きなポップアップ・メニューが現れ,全カテゴリを表示する。Ajaxを用いており,動作は滑らか
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 米Amazon.comが食料品/日用雑貨の販売を始めたことが今,ちょっとした話題になっている。同社は5月25日,正式発表することなく米国サイト内に「Grocery」(グロサリー)部門を新設(写真1)。これといった宣伝がなかったためか,当初あまり目立たなかったが,6月半ばに英Reutersなどが報じたことで一気に知られることになった。

 同社は,Webのテクノロジー開発に力を注ぎ,それを基盤とした書籍/CD販売で成功を収めた。ここ最近はアパレル,健康/美容関連商品の分野にも進出。現在の商品カテゴリ数は30種を超えている(写真2)。そんな同社が,果たして食料品でも成功できるのか? そこには大きなリスクが潜んでいないのか? そんなふうに危惧する声が多く聞かれる。

 今回は,欧米メディアの報道なども見ながら同社のこの新展開について考えてみたい。

あのWebvanの二の舞いにならないのか?

 Amazon.comのグロサリー部門は現在のところベータ版。パスタ,ドレッシングや,パンケーキミックス,缶入りのソーセージ,スープといった加工食品のほか,洗剤,おむつなどの日用品も用意している。Amazon.comによれば,Kellogg's社のシリアル類やKraft社の「Jell-O」といった定番商品も揃えており,その商品数は1万点に及ぶという。現在のところ牛乳や生肉といった生鮮食料品は扱っておらず,すべての食料品が揃っているわけではないが,「日々商品種を拡充していくべく努力している」(同社)という。

 食料品のインターネット販売といえば,ドットコム時代の米Webvan Groupを覚えてる方も多いだろう。Webvan社はネット上の大型食品スーパーを目指し,1999年に半ばに営業を開始。多品種多品目の品揃えや,希望の時間に無料配達するというサービス実現のため,10億ドル以上の資金を調達。ITインフラ/配送システムを万全に整えてスタートしたが,2年後に12億ドルの負債を抱えて倒産した(関連記事)。

 その後,このWebvan社の失敗は「ドットコム業界で過去最大の“惨事”」「オンライン小売りへの教訓」などと言われ,業界全体の事業規模がスケールバックしていったという経緯がある。その市場に今,Amazon.comがチャレンジするというわけである。

 現在のところ,米国における食料品ネット販売の大手には,オランダRoyal Ahold傘下のPeapodなどがあるが,この企業でも配達地域は米国10州の18地域と限定的。英Reutersの記事によると,FreshDirectもネット販売で有名ではあるが,ニューヨーク市のみの展開という。老舗グロサリー・チェーンSafewayは,実店舗は北米中で大規模に展開しているものの,ネット注文が可能な地域はまだ少ないという(Reutersの記事)。

 Amazon.comの場合は,書籍などと同様に全米が配達対象地域。食料品分野でWebvan社のような展開をするのであれば,同様にコストがかさみ,やがては利益を圧迫していくことになると言われている。なお同社は2003年10月にグルメ食品の取り扱いを始めているが,これは高級グルメストア米Dean & DeLucaなどのサードパーティ業者との提携によるもの。今回は自前で在庫を抱えるといった点でこれまでの食品展開と異なる(The Seattle Timesの記事)。

 海外メディアを見ていると,米CNET News.comに,「Amazon is not Webvan 2.0」というブログ記事が掲載されていた(次ページに続く)。