とある検索サイトを運営する会社から「ユーザーが検索を行い、検索結果が表示されてからクリックに至るまでにどれぐらいの時間がかかるか」という統計を教えていただいたことがある。その会社によれば、ユーザーがクリックに至るまでの時間はわずか6秒だという。

 これを長いとみるか、短いとみるかは人それぞれだと思うが、少なくとも6秒という時間で検索結果に表示されるすべてのテキストを熟読することは不可能だろう。だとするならば、ユーザーは気になる部分だけを流し読みし、より直感的にクリックに至っていると考えるのが妥当だろう。

 なお、一説には人が一瞬で理解できる文字数は、10文字前後だと言われているから、そう考えてみると、ページタイトルを中心とした検索サイトの検索結果というのは利にかなっているのかもしれない。

 ちなみに、前述の会社では、ユーザーが検索ページを見る際の視線の動きについても調査を行ったそうだ。その結果わかったことは、ユーザーの視線はページの下部よりも上部に、ページの右側よりも左側に集中している傾向があるという。

 一般的に人間がウェブに表示されるような横書きの文章を目にする時、視線の動きはアルファベットの「Z」の文字を描くといわれるが、どうやら検索結果ページに関しては、この論理は当てはまらないようだ。それよりも、多くの検索ユーザーの視線は画面の左側を中心に上から下へ移動すると考えたほうが良さそうだ。

 このような調査結果を踏まえると、次のようなことが言える。

  • ユーザーは検索結果の気になる部分だけに目を通す
  • テキストの内容を熟読せず、流し読みをしている
  • ユーザーの視線はページ上部と左側に集中する

 これは、自身の検索行動を振り返ってみれば、当然といえば当然過ぎることかもしれない。しかし、意外にもこうしたことを意識して、SEM(検索エンジンマーケティング)に活用している方はそれほど多くはないのではなかろうか。

 そこで、今回は、このようなユーザーの検索行動を踏まえた上で、検索連動型広告について考えてみたい。

 まず、「ユーザーは検索結果の気になる部分だけに目を通す」という部分だが、自社広告に対するユーザーの関心を高めるには、代表的な手法としてはおそらく2つの手法が考えられるだろう。

 ひとつは広告原稿へのキーワードの挿入である。ご存知のように、検索連動型広告において、広告原稿内に検索キーワードが含まれる場合、キーワードは太文字で強調表示される。そのため広告原稿内にキーワードを挿入することで、視覚的な印象が強められる。

 また、もうひとつの手法は、記号などの有効活用だ。使用可能文字などには制限があるが、キーワードの太文字表示と同様に、視覚的な訴求効果が狙える。ただし、これらはあくまでも技術論であって、目立たせることを意識するあまり、広告原稿の内容自体に問題が発生しては本末転倒になるので、ご注意いただきたい。

 次に、「テキストの内容を熟読せず、流し読みをしている」という部分であるが、これは上記の技術論的な側面よりも広告原稿作成における思い込みを払拭することが必要になるだろう。例えば、最近よく散見される広告原稿に、あまりに多くの情報を詰め込んだせいで、直感的に理解できない原稿というものがある。担当者としては、少しでも自社商品・サービスの良さを理解してもらおうと考えてのことだと思うが、逆にそれが仇となっている格好だ。

 例えば、仮にユーザーが「不動産」というキーワードで検索したとして、「物件選びはアウン不動産に。親切で安心。都内中心に多数。物件検索も簡単!」という広告が検索結果に表示されたとしたら、6秒のうちに流し読みするには、あまりにも情報量が多すぎるような気がする。逆に訴求ポイントを絞り込んだ方がユーザーの興味をひきやすいと言えるのではないだろうか。

 最後に、「ユーザーの視線はページ上部と左側に集中する」という部分だが、広告のクリック率を最大限に高めるためには、やはり上位での広告表示は必須であるということだろう。また、「ユーザーの視線は左側に集中する」という原則から考えると、前述の広告原稿へのキーワードの挿入や記号の活用などは、タイトルや説明文の先頭に置くことが理想的であると言える。

 今後、検索連動型広告への出稿に関しては、以上のようにユーザーの行動分析の結果も意識していくことが必要ではないだろうか。


(アウンコンサルティング コンサルティンググループ 片山麻依子)



 本コラムは、アウンコンサルティングのサイト 「(((SEM-ch))) 検索エンジンマーケティング情報チャンネル」に連載中の「SEM特撰コラム」を再録したものです。同サイトでは、SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。