写真1 「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」の委員長を務めた片山虎之助自民党参院幹事長
写真1 「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」の委員長を務めた片山虎之助自民党参院幹事長
[画像のクリックで拡大表示]

 与党である自由民主党の「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)は,「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)と並行する格好で,今後の通信と放送の在り方を議論してきた。そして出来上がった報告書には,竹中懇談会とは異なる結論が書かれていた。特にNTTの組織問題については大きな食い違いがある。

 竹中懇談会は「2010年には通信関連法制を抜本的に見直すため,NTT持ち株会社の廃止などを含む検討を『速やかに』始めるべき」と提言。一方で片山委員会は,NTTの組織問題について,「拙速に結論を出すべきでなく,『2010年ころに』NTT法などの関連法令の改正を検討するべきだ」としている。政府の政策の基本方針となる「骨太方針」への反映を巡り,竹中懇談会と片山委員会の調整が進められてきたが,その調整もいよいよ終わりに近づいたようだ。

 片山委員会の報告書案ができあがった直後の5月26日に,委員長を務めた片山虎之助自民党参院幹事長を直撃したインタビューを振り返ることで,片山委員会のスタンスを浮き彫りにする(写真1)。

-----------------------------------------------------------------

——竹中懇談会と片山委員会がほぼ同じ時期に出した報告書案の今後は。

 二つの案には一部乖離(かいり)がある。竹中平蔵総務大臣が「すり合わせしたい」と言うので現在,事務方が調整しているところだ。ただ私は,二つの案で合わないところは合わないままでいいと思っている。政策を決めるのは政府と与党で,最終的に法律を変えるには国会の承認が必要。大臣の私的な懇談会に過ぎない竹中懇と全く同じでなくてよい。

 竹中懇談会の議論は「通信と放送の融合で経済を活性化」という話から,だんだんそれてきた。放送のデジタル化もNTTの改革も,当事者や関係者にはとてつもなく大きな問題である。それでも改革する場合は,しぶしぶでも関係者の同意を取り付ける必要がある。今の日本は6カ月だけの私的懇談会の結論で,大きく変えられる仕組みにはなっていない。時間をかけて議論を尽くさないと。

——NTTの在り方では,竹中懇談会と大きく意見が食い違っている。

 通信市場は世界的に見ても環境が変わっている。一度バラバラになった会社が,またくっつき始めた。日本のブロードバンド環境も大きく変わっており,光ファイバが急激に伸びている。

 この変革期に,NTTの組織について大改正や抜本見直しをすることがふさわしいのか。私はNTTの次世代ネットワークが完成して,光ファイバが大規模に普及し,放送のデジタル化が終わりに近づく2010年以降に抜本見直しをするべきだと考えている。

 2010年にはNTT法も電気通信事業法も根本的に見直す。必要なら,NTT法をなくしてNTTグループを資本分離するかしれない。2010年のほうが,通信と放送の連携を進めやすいはずだ。

 日本の通信が外資に牛耳られたら困るし,通信分野の国際競争力も必要。そこはNTTにしっかりしてもらわないと。かといって独占や肥大化は良くない。そういう二律背反の難しい問題であり,単にNTTを弱くすればいいというものでもない。だから我々の案でも2010年まではNTTへの「行為規制」の強化で競争を促進しろと言っている。

——片山委員会を立ち上げた経緯は。

 もともとは放送関連を中心に議論する予定だった。NHKの不祥事や受信料不払いなどで国民的な関心が高まっていたし,竹中懇談会のメンバーが通信分野に片寄っている感じだった。総務省が竹中懇を始めるなら,「自民党としても何かやらないと」という意見が出てきた。放送事業者から,「竹中さんが総務大臣になったら,何をやり出すのか心配だ。片山さんが,ぜひ委員長になってくれ」と頼まれたこともあり,私が委員長になったわけだ。

 放送業界は「『融合』といわれて,通信と同列に並べられるのは嫌だ」と言っている。同じ立場で通信と一緒になることはないので「連携」だと。そういうわけで,私は「通信と放送の連携」と今は呼んでいる。ただ,放送業界は法制度の一元化も嫌がっているが,検討課題にはなるだろう。