「まずは来年4月に国内100社の『最も働きがいのある会社』リストを発表します。そのために今、500人以上の規模の多様な業種の会社に参加を呼びかけているところです」---。米国の調査会社Great Place to Work Institute(サンフランシスコ)と提携した日本能率協会コンサルティング(JMAC)の斎藤智文氏は意欲的にこう語る。

 Great Place to Work Instituteは20年以上にわたり、米国をはじめ世界各国で「最も働きがいのある会社ベスト100」を調査。現在29カ国で活動している。98年からは毎年1月、米国の著名なビジネス誌フォーチュンで米国企業のベスト100リストを発表。今年1月のリストには、スターバックスコーヒー、アメリカン・エキスプレス、マイクロソフト、アフラック、フェデックス、Yahoo!、イケア・ノースアメリカ、ナイキなど、日本でもおなじみの顔が並んだ。

 同社が定義する働きがいのある会社は、「従業員が、勤務している会社や経営者・管理者を信頼し、自分が行っている仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社」のことだ。リスト作りに賛同した企業に従業員アンケートを実施し、職場における「信頼」「誇り」「連帯感」を測定する。アンケートは5段階で回答する選択問題が57問、自由回答問題が2問から成る。このほか企業の本社部門に、経営理念や人事施策などを聞く。

 現在、米国では1000社以上がアンケートに応え、そのうちのベスト100社をフォーチュンやHRマガジンで公表。日本でもトヨタ自動車を筆頭に従業員の業務意欲が高いといわれる会社が多数参加することになれば、とても有意義なリストになるだろう。そうした“優良企業”や競合他社の調査結果と比較すれば、自社に足りない面がどこであるかが見えてくるからだ。改善の手を打ちやすくなる。

 Great Place to Work Instituteの日本での事業でチーフ・プロデューサーを務める斎藤氏は、「日本はこの十数年の間で成果主義がいきすぎてしまったのか、従業員のロイヤルティーが低い企業が多いのではないか」と見る。企業が長期的に成長し続けるには、従業員の働きがいを高めることが欠かせない。まして、雇用形態の多様化とともに人材の流動化が進みつつあるいま、働きがいの低い企業が優秀な人材を保有し続けるのは困難になりつつある。

 斎藤氏は、「リストに入ることによって、マスコミなど各方面から賞賛の声が来る。その結果、優秀な人材が集まる。そんなリストにしたい」と抱負を語る。何に最も働きがいを感じるかは個人の価値観によって異なるだろうが、「信頼」「誇り」「連帯感」というキーワードが万人にとって共感できるものであることは間違いない。