米Microsoftはマサチューセッツ州ボストンで,6月11~16日の1週間通してTechEd 2006を開催した。しかしTechEdの外でも,開発者にとって重要な3つのニュースが発表されている。(1)「Visual Studio Team Edition for Database Professionals」のコミュニティ技術プレビュー(CTP,Community Technology Preview)版のリリース,(2)WinFXの「.NET Framework 3.0」への名称変更,(3)「Project Glidepath」の発表である。

 1つ目のニュースは,Microsoftが「Visual Studio Team Edition for Database Professionals」のコミュニティ技術プレビュー(CTP,Community Technology Preview)版をリリースを発表したことだ(関連記事)。Visual Studio Team Edition for Database Professionalsは「Visual Studio Team Suite」を強化した製品で,データベース用の新しい管理/設計ツールが付属する。このCTP版の登場から,Visual Studio Team Suiteが開発の完了したツール・セット製品でないことが分かる。搭載されるツールの開発や強化は現在も続いており,まだ登場していないツールもある。さらにこのCTPの付属ツールは,Visual Studio 2005とうまく連携可能で,データベース開発とアプリケーション開発を統合しようとするMicrosoftの最新の成果といえる。大規模アプリケーションを開発する際の困難の1つは,データベースと切り離された存在という点にある。データベース開発がVisual Studio 2005上でうまく連携するようになると,開発者はこうした開発分野を理解する必要に迫られる。

 Team Edition for Database ProfessionalsのCTP版に含まれるツールは,3種類に分類できる。そして著者は,4種類目のツールが最終版に搭載されるよう願っている。

 1種類目は,データベース・オブジェクトをVisual Studio 2005と統合するのツールだ。例えばこのツールを使うと,Visual Studio 2005のリファクタリング機能をデータベース・オブジェクトに対して使える。データベースのカラム名を変更する場合,Team Edition for Database Professionalsはデータベースのストアド・プロシージャ内の変更対象のカラムに対する参照を自動的に検出し,すべて自動更新してくれる。

 2種類目は,データベースと「Team Foundation Server」を統合し,自動的にスクリプトとデータベース・オブジェクトをバージョン管理するツールだ。それだけにとどまらず,バージョン管理以上の機能も備えている。このツールを使うと,最新のデータベース・スキーマをソース管理システムに直接取り込める。そのうえ,何らかの変更をスキーマに施した後で,直前に取り込んだかリリースしたバージョンと最新版との差分をもとにして,ソース管理エンジンに変更用スクリプトを生成できる。これは非常に優れた機能である。

 3種類目は試験用のツールだ。Team Edition for Database Professionalsには,ほかのTeam Edition用のユニット試験ツールを利用できるインターフェースがある。そのためストアド・プロシージャのユニット試験を自動化し,データベースのコンポーネントをほかのシステムのコンポーネントと同じように扱える。

 さて,4種類目の機能として著者は,本当に使い物になるクエリー分析機能をTeam Edition for Database Professionalsの最終版に搭載してもらいたい。著者が望んでいるクエリー分析機能を使うと,ストアド・プロシージャや動的クエリを調べ,クエリとそのクエリのアクセス対象テーブルとの組み合わせで起きるパフォーマンス問題の原因を解明できる。

 例えば,著者は現在,自社製アプリケーションの新版の作成を別の企業に外注したある企業と仕事をしている。この企業は外注先から,きちんと完成したように見え,要求した機能が実装されていて,試験も合格したと思われる状態のアプリケーションを納品された。しかし製品となってユーザー数が増えると,パフォーマンス問題が表面化した。その結果,この企業は大々的なリリースを取りやめ,ごく一部の顧客にのみ提供することにした。そして,急ごしらえで何とか新版の完成を目指し,ほんの一握りの顧客にリリースしようとしている。著者がTeam Edition for Database Professionalsへの搭載を望んでいるクエリ分析機能があれば,このアプリケーションの問題解明に大変役立つだろう。あらゆる開発者向け診断ツールのなかで,最優先で実装してもらいたい機能である。

 Microsoftによると,Visual Studio Team Edition for Database Professionalsの公式リリースは2006年末の予定なので,筆者が夢見るようなクエリ分析機能の搭載は望み薄だ。ほかのTeam Systemパッケージ製品と同様,Team Edition for Database Professionalsは単体購入が可能で,Visual Studio Team Suiteを買わなくても入手できる。詳細については,Visual Studio Team SuiteのWebサイトに掲載してある。

 筆者が取り上げたい2つ目のニュースは,あらゆる開発者の使う基盤を混ぜ合わせることで,均質化しようとする動きにかかわる。Microsoft副社長のS.“Soma”Somasegar氏が(自身のブログ)で,「WinFX」技術を「.NET」製品系列に入れると発表したのだ(関連記事)。その結果,WinFXの名称は「.NET Framework 3.0」となる。注目に値することは,.NET Framework 3.0がC#3.0でなくC#2.0に対応する点である。C#3.0は「Visual Basic(VB)9.0」に合わせてリリースする見込みで,「.NET Framework 4.0」の構成要素となる(Microsoftは.NET Frameworkの次版にどのような名前を付けようとも,Visual Studioの次版「Orcas」とともにリースする)。

 さらに.NET Framework 3.0では,ASP.NET 2.0からのアップグレードが容易に実施できる点も重要だ。なぜなら,ASP.NET 2.0はASP.NET 2.0のまま変わらないからだ。このニュースの本質を考えると,なぜMicrosoftがWinFXの名称変更を公式プレスリリースでなくブログで発表したのか,容易に理解できる。

 最後に取り上げるニュースは,「Project Glidepath」だ。このプロジェクトは,小規模なパートナ企業に対してWindows Vista向けアプリケーションの開発を迅速化する情報などを提供していくための,支援活動である。MicrosoftはProject GlidepathのWebサイトを6月14日に開設した。Project GlidepathのWebサイトで詳細を確認できる。