写真1 5月9日に行われた「通信・放送の在り方に関する懇談会」第11回会合<BR>このころ,竹中懇談会と片山委員会の調整が進められていた
写真1 5月9日に行われた「通信・放送の在り方に関する懇談会」第11回会合<BR>このころ,竹中懇談会と片山委員会の調整が進められていた
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写真2 民間開放・規制改革会議で議長を務める宮内義彦・オリックス会長(左)と公開討論に臨んだ竹中懇談会の松原座長
写真2 民間開放・規制改革会議で議長を務める宮内義彦・オリックス会長(左)と公開討論に臨んだ竹中懇談会の松原座長
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 「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)の議論は6月6日の最終報告書の作成で幕を閉じたが,その成果が問われるのはこれからだ。議論をまとめた報告書が,何らかの形で政策に反映されるのか,単なる提言だけに終わってしまうのか,今後の根回しにかかってくる。

 特に自由民主党(自民党)と食い違っているNTTの在り方については調整が必須。NTT法廃止に向けた議論を,竹中懇談会は「速やかに始めるべき」と提言しているが,自民党は「2010年ころに検討すべき」という方針を打ち出している。

 既に竹中平蔵大臣や松原聡座長は,報告書をまとめる前から水面下で調整に走っており,現在も政策反映のために関係各所との話し合いを続けている。調整先は,与党の自民党や公明党だけでなく,内閣府の「規制改革・民間開放推進会議」(規制改革会議)や他省庁など,多方面にわたる。報告書の実現性を高めるため,竹中懇談会として,最後の執念を見せている。

予断を許さない与党との最終調整

 竹中大臣が最も調整に時間を費やしており,政策反映の上で大きなハードルとなる存在が,自民党の「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)だ。自民党の参議院幹事長という要職にある片山虎之助氏が委員長を務め,竹中懇談会とほぼ同じ時期に,通信と放送市場に関する議論を進めてきた。竹中懇談会の報告書に掲げた提言を政府の基本方針である「骨太方針」へ反映させるには,片山委員会との調整は欠かせない。

 ところが片山委員会と竹中懇談会の議論の終盤から,NTTの在り方について乖離(かいり)が目立ち始めていた。両会合は5月初頭から,すり合わせのための調整を進めていたが,6月初頭の最終報告書では,NTTの組織改革の在り方やNTT法廃止の時期についても見解の相違が残ったままとなった(写真1)。

 片山参院幹事長は5月26日時点で,「二つの案で合わないところは合わないままでいい。最終的に政策を決めるのは政府と与党だ」と強硬に言い切っている。現在も竹中大臣や松原聡座長が自民党との調整を続行し,公明党の部会に松原座長が呼ばれるなど,与党との話し合いの場を設けている。竹中大臣は,個別に小泉純一郎首相にも懇談会の結論について報告したようだが,大きな後ろ盾となる発言は得られなかった模様。総理の大きなバックアップが期待できない以上,与党との調整が持つ意味は重要度を増してくる。

規制改革会議,他省庁も巻き込む戦略へ

 竹中大臣や松原座長は,自民党との調整以外にも,あらゆる手立てを尽くして報告書を実行に移そうと動いている。その一例が,オリックスの宮内義彦会長が議長を務める規制改革会議との連携。規制改革会議も竹中懇談会と同様に,NTTのアクセス部門の機能分離やNTT法の廃止などを,答申作成へ向けた論点整理で提言した。竹中懇談会の松原座長は,最終会合の前日となる6月5日,規制改革会議との公開討論に参加。竹中懇談会と規制改革会議の見解の一致をアピールした(写真2)。

 さらに経済産業省や公正取引委員会(公取委)といった,他省庁との連携も模索。経済産業省が作成していた政策レポートに,懇談会の結論を反映してもらえるかどうかを検討したことがあったという。実際に竹中大臣は,6月7日の経済財政諮問会議で懇談会の報告書について説明し,「(経済産業省が中心になって検討中の)経済成長戦略大綱にも反映してもらいたいと考えている」と発言した。

 加えて,6月6日の総務省の「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」(IP化懇談会)では,公取委が突然,竹中懇談会の結論を後押しする発言をしている。この日,公取委は「IP化の進展に伴う競争政策上の課題について」というプレゼンテーションを実施。その中で,「今のNTTの組織の在り方はIP化の時代に則していない。NTTの自由度を高める一方で,競争促進のためのボトルネック解消を考えるよう,NTTの組織見直しに当たっては要請したい」とコメントしたのだ。「竹中懇談会は公取委も味方につけた」(IP化懇談会の構成員)という言葉からは,竹中大臣や松原座長が公取委にも連携を働きかけたことがうかがえる。

 こうした水面下の動きに加え,経済財政諮問会議では竹中大臣自身が懇談会の報告書内容に関して積極的な発言を繰り返している。7月初旬の骨太方針策定に向けた調整は,まさに今ラストスパートに入った。