===> 後編へ続く

 早くから放送・通信連携サービスであるアナログデータ放送「bitcast」に取り組み,2006年4月1日からはワンセグ放送サービスも開始したフジテレビジョン。デジタルコンテンツ局デジタル企画室 副部長の加藤浩輔氏と,デジタルコンテンツ局モバイルコンテンツ部 副部長の伊東達郎氏にワンセグ放送の取り組みとサービス内容を聞いた。

(聞き手は隅倉 正隆=IT放送技術ジャーナリスト兼コンサルタント)


---ワンセグ放送を始めた2006年4月から約2カ月がたちましたが,視聴者の反応はいかがでしょうか?

最も反響が大きい「トリビアの泉」のデータ放送画面

 普及している端末数や視聴者数が少ないのですが,数字を見ていると,データ放送を良く見てくれているということがわかりました。また,連動番組によってはリアクションがあるコンテンツと,ないコンテンツがはっきり分かれていることも分かりました。

 分析まではまだ行っていませんが,我が社が提供しているワンセグのデータ放送,特にバラエティ番組(トリビアの泉やIQサプリなど)に連動したデータ放送コンテンツは,データ放送の1次リンク(「第2回 ワンセグ放送のサービス・イメージ」の図3参照)を使わずに,番組トップ・ページからダイレクトにその番組の携帯サイト(2次リンク)へ飛ぶような仕組みを使っています。

 トリビアの泉は,ワンセグから視聴者が参加できるので,5月31日の放送からは“ヘイ”ボタンの音が出るようにしました(図3)。そして,番組終了時に,携帯電話から参加していただいた方の“ヘイ”の数を集計して,結果を発表しています。

---フジテレビジョンでのワンセグ放送に対する具体的な取り組み,編成方針は?

 当面の目標は,テレビの接触機会の拡大と,データ放送から携帯サイトへの誘導です。また,視聴者が見て利便性を感じてくれるニュース,天気予報,番組の広報的な情報は,非連動型データ放送コンテンツとして,常時最新情報を提供していくようにしています。

 そして,これはとても重要なサービスであると考えているのですが,広く普及している携帯電話機ならではのサービスということで,災害情報や地震情報を分かりやすく,素早く提供していくようにしています。

 具体的には,何か大雨や地震などの災害が発生したときに,ワンセグのデータ放送のトップ・ページの最上段に,災害情報を表示するようにしています。これは,今までのテレビのニュース速報と同じです。通常,ワンセグのデータ放送のトップ・ページ最上段にはバナーがありますが,緊急時にはそれを下に下げて,災害情報を表示するようにしています。また,これもテレビと同じなのですが,地震情報については自動化しています。

 さらに,ネット番組(全国放送番組)に関しては,FNSの全社会議で調整しながら,画面の領域を分けています。具体的には,データ放送画面の上半分はネットの共通番組のコンテンツを置き,下半分はローカル放送局独自のコンテンツを置くといったぐあいです。

 制作設備を持っていない系列局に対しては,希望に応じてFNS共通コンテンツ(非連動コンテンツ)を提供しています。これは,地上デジタル放送開始時に整備したネットコムというFNS系列で共有するデータ配信インフラ回線を利用しています(図2)。

図2 FNS共通コンテンツを提供するFNSネットコム回線を利用したワンセグのデータ放送システム

 この共通コンテンツの内容は,ほぼフジテレビが制作した非連動コンテンツと同じ内容をベースに系列共通で利用する差し替えツールを使って,そのローカルに依存する情報,例えばローカル・ニュースを挿入したり,ロゴや放送局名などを差し替えたりしています。

 それと,ワンセグ放送のデータ放送フォーマット(デザイン)は,東京・名古屋・大阪で共同開発しましたので,データ放送のトップ・ページの骨組み(枠組み)はほぼ同じになっていると思います。方針としては,共通ルールを設けて,見せ方を共通化しましょうということにしています。ただし,トップ・ページからリンクしているデータ放送コンテンツの各局メニュー画面は,ローカル・コンテンツ領域ですので,独自のデザインを採用している系列局もあります。これは,各局の運用の手間を楽にするためです。

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