一括レジ精算にICタグを活用する実証実験はこれまで、経産省も何度か実施しているが、どれも100%の読み取りは難しいという結論だった。ICタグは買い物かごの中で、缶飲料などの金属物に付いたり、2枚がぴったり重なったり、リーダーのアンテナと垂直の向きになったりすると、物理的に読み取りが難しい。顧客が商品を乱雑に入れた状態のままでは、どうしても読み落としが発生する。かといって、店員が商品をきれいに並べ直しているようでは、かえって時間がかかる。そこでファミリーマートなど3社は、ICタグに最適なレジ精算の業務フローを考えてシステム化した。

 EXPRESS POSのリーダーの上に買い物かごを置くと、店員向けの画面には、読み取った商品の名前や数量などのほか、合計何個の商品を読み取ったかが大きく表示される。店員はこれを見て、実際の商品数と合っているかどうかを確かめる。「10個までなら目視でほぼ瞬時に分かる」(ファミリーマート総合企画部経営企画室新事業開発グループマネジャーの目黒健太郎氏)という。コンビニはスーパーなどと違い、「平均購買点数は3~5点」(目黒氏)で、昼食などのピーク時にはさらに少ない。読み取りミスの有無は、ほぼ目視で確認できそうだ。

 読み取った数が合わなかったり、商品数が多くて目視で確認できなかったりしたときに備えて、袋詰めの作業を店員が行うようにした。袋詰めの作業は、スーパーなどのように顧客に任せた方が、レジ精算をさらに高速化できる。それでも店員が袋詰めを行う利点は二つある。一つは、商品を袋に入れながら点数を確認できること。もう一つは、読み取れなかったICタグを読める可能性が高まることである。

 読み取り率を高められる仕組みは次の通り。例えばペットボトルの場合、リーダーのアンテナに近い位置に来るように、ICタグはボトルの底に張り付けてある。ボトルが買い物かごの中で立てられていれば読みやすいが、横倒しになっているとICタグとアンテナが垂直の角度になるので読み取りにくい。しかし店員が袋詰めするため、買い物かごをリーダーの上に載せた状態のまま商品を取り出せば、そのときにICタグの向きが変わって読み取れる。同じように偶然、ICタグの上に缶飲料などが載っていた場合も、缶飲料を取り出したときに下のICタグが読み取れる。ICタグ同士が重なっていた場合も同様である。さらにICタグが破損していた場合などに備えて、EXPRESS POSにはバーコードリーダーも装備した。

 マスコミ向けに公開したデモでは実際に、商品を乱雑に買い物かごに入れた状態でも、3~5点程度の商品数ならほぼ読み取りミスは発生していなかった。ペットボトルは横倒しになっていても、アンテナ上にじかに置かれていれば問題なく読み取れていた。ICタグが小型なためアンテナと正対しても読み取り距離は約20cmと短いが、買い物かごの3分の2くらいの高さまで届く。弁当は3段まで重ねても大丈夫だという。