Calc編の最後は,Microsoft ExcelからOpenOffice.org Calcに移行する際に,特につまずきやすい点について解説する。
ExcelファイルをCalcに読み込んだ際の縦方向のはみ出し
Calcでは,「Excel97/2000/XP」のファイルを読み込める。読み込んだ際には,テキストの欠落やレイアウトの変化などはほとんど見られない。ただし,次のような現象が生じることがある。
まず,用紙の1ページに収まるようにレイアウトした表が,縦方向に少しだけはみ出すことがある。これは前回に紹介したの「表を用紙サイズに収める」(写真1)で調整できる。
関数は自動的に変換される
ExcelとCalcでは,数式の記述に一部違いがある。Excelでは関数の引数の区切りに「,」(コンマ)を使うが,Calcでは「;」(セミコロン)を使う。ただし,関数ウィザードを使う場合には自動的に入力されるので,数式をすべてキーボードから入力するのでない限り,違いを意識することはないだろう。Excelファイルを読み込んだ場合にも自動的に変換される。関数の大半には互換性があるものの,一部動作が異なるものもある。例えば,COUNTBLANK関数では,「=""」という値をExcelはカウントするが,Calcはカウントしないといった場合である。また,Calcには,日本語のふりがなを扱うPHONETIC関数がない。
関数の互換性については,次のWebサイトに整理されているので参考にして欲しい。
・「OpenOffice.org ユーザーのためのMicrosoft Office 互換性研究室」
印刷するときの注意点
Calcを実務で使い始めると,印刷に関するデフォルト(初期設定)の違いで驚かされることがある。シートの印刷では,Excelでは選択中のシートが印刷される。Calcではすべてのシートが印刷される。印刷するシートは,印刷ダイアログで選択できるので,印刷したいシートの指定を忘れないようにしよう。
なお,[ツール]-[オプション]で「OpenOffice.org Calc」-「印刷」を選択すると,「選択した表のみ印刷」に切り替えられる(写真2)。
また,Calcでは,デフォルトでヘッダとフッタが印刷されるようになっている。不要な場合は,前回の「ヘッダとフッタを設定する」(写真3)で設定を変更しよう。
清書ツールとしては弱い
Writerと同じく,Calcにもドラッグ&ドロップで罫線を引く機能がない。また,連結したセルをオートフィルでコピーすると,セルはバラバラになってしまう(写真4)。このような違いのために,Calcを表の清書ツールとして使用すると,Excelと比較して操作が煩雑に感じることがある。
VBAは未サポート
最後に,CalcはExcelのVBA(Visual Basic for Applications)をサポートしていない。Calcは,独自マクロのBasicを備えているものの,BasicはVBAとは互換性はない。VBAを含んだファイルをCalcで開くと,コメント文として読み込まれる。この状態で,Excel形式でファイルを保存すると,オリジナルと同じ状態で戻される。
VBAをどのように読み込むか,どのように保存するかは,[ツール]-[オプション]で[読み込みと保存]-[VBA属性]で設定できる(写真5)。