Nexen.net による,世界中で使用されているPHPのバージョンなどの詳細な統計
Nexen.net による,世界中で使用されているPHPのバージョンなどの詳細な統計
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国産PHP用フレームワークEthnaが生成した画面
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 今月は,PHPのリリース関連情報,国産フレームワークEthnaの新版,PHPの普及度に関する統計などについて紹介する。

PHPリリース関連情報

 今月は,PHP 4.4系の最新版にあたるPHP 4.4.3のリリース候補版 PHP 4.4.3RC1がリリースされた他は,PHPのリリースに関するめだったニュースがなかった。間もなく正式公開予定のPHP 4.4.3のリリースに関して以下に簡単に紹介する。

PHP 4.4.3リリース間近

 PHPの新たな機能の開発は,PHP 5.2系およびPHP 6系において行われており,PHP 4については,主としてバグ修正のみが行われている。1月13日に行われたPHP 4.4.2のリリース以降,PHP 4系の新たなリリースは行われていなかったが,5月22日にPHP 4.4.3のRC1(リリース候補1版)がリリースされ,正式版も近日中にリリースされる見込みとなった。本バージョンでは,PHP 4.4.2のリリース以降に見つかったセキュリティ上の脆弱性に関する修正を含む約20件の問題が修正されている。

 現在,PHP 4.4.3RC1は,PHP 4.4系のリリースマスターであるDerick Rethans氏のWebサイト(http://downloads.php.net/derick/)から入手可能である。本RC1で致命的な問題が発生した場合,RC2がリリースされる予定となっている。リリース前のテストに参加し,安定したリリース版が作成されるよう協力してほしい。

Nexen.netによる詳細な統計公開

 Nexen.net により,世界中で使用されているPHPのバージョンなどに関する詳細な統計(5月に実施)が公開された(写真1)。

 この統計は,従来からWebサーバーのインターネット上でのシェアに関する統計を公開しているNetcraftなどと同様に,インターネット上の1500万のWebサーバーから得られるHTTPヘッダーから分析したものである。この手法はインターネット上の占有率を容易に分析できる反面,PHPのインストールを示すHTTPヘッダーの出力を無効としている場合には,使用されているかどうかが不明であるという欠点がある。

 標準的なインストールでは,PHPのバージョンなどを示すHTTPヘッダーが出力されるようになっているが,設定ファイルphp.iniでexpose_phpオプションにOffを指定することで無効とすることができる。近年,セキュリティ上の観点から,このHTTPヘッダーを無効とし,PHPスクリプトの拡張子(.php)も変更して運用されることが多くなっているようである。

 Nexen.netによる統計結果から分かる事項をまとめてみよう。

 まず,インターネット上での占有率であるが,PHPが35%,ASPが21%となっている。PHPの占有率はほぼ一定となっているようである。ただし, 前期の理由により不明な割合が43%あることに注意する必要がある。

 また,使用されているPHPのバージョンに関しても詳細なデータが示されている。このデータから分かる事項を以下にまとめる。

 PHP 4の占有率は91%,PHP5は8%となっている。前月と比べて,PHP5が3.5%から増加したものの,以前としてPHP 4が大勢を占めている。日本国内ドメインに関しても,PHP5の割合は約5%と,(若干少なくないものの)ほぼ同様の結果となっている。

 PHP 全体の中では,PHP 4.3系が48%と最も多く,PHP 4.4系の34%が続いている。また,PHP 4.3.9以前のバージョンが28%を占めている。

 PHP 4.3/4.4系の中では,PHP 4.3.10以降の割合が78%と比較的新しいバージョンが使用されている。その中で,PHP 4.3.10とPHP 4.4.2がそれぞれ22%で最も使用されている。今後は,PHP 4.4系の最新版PHP 4.4.xへの移行が進むと思われる。

 PHP 5では,PHP 5.1.2の割合が28%と最も高くなっている。

 この結果より,大半のユーザーは「枯れた」バージョンであるPHP 4.3/4.4系を使っており,セキュリティ上の修正などを考慮して,比較的最新のバージョンに更新して使用していることが読み取れる。ただし,PHP 4.3.9以前のバージョンも28%を占めており,セキュリティ上の問題が未修正のまま運用されている懸念がある。

 一方,PHP 5系への移行はあまり進んでいない状況にある。これは,ある意味でPHP 4の完成度が高いことを示しているが,安定度や互換性などに不安要因がある印象を与えていることも要因としてあげられるだろう。実行速度を大幅に改善したPHP 5.1系が既にリリースされており,今後は,PHP 4からPHP 5への移行が進むと期待される。

 また,PHP普及率の国別の統計結果も公表されている。PHPの市場占有率について,欧州では比較的高く約45%となっている。日本は32%と,米国と同様ほぼ平均値(35%)に近い普及率となっている。アジア地区では,韓国が66%と高く,逆に中国が10%と低くなっている。マルチバイト文字を使う同じアジア圏であってもPHPの普及率に大きな開きがあるという事実は大変興味深い。

 次に,国産の有力なPHP用フレームワークであるEthnaの初のメジャー・バージョンアップについて解説する。