スマートシェルフの性能や運用方法には課題も出てきた。スーツの場合には、空調風で商品が揺れただけでリーダーが反応してしまったり、リーダーのアンテナ同士が干渉を起こすといった問題である。

 ICタグは2枚が重なった状態だと、互いのアンテナが干渉して読み取りにくくなる。同じようにリーダーのアンテナも近接して設置すると、干渉して読み取り性能が劣化する。スーツのスマートシェルフでは、すべての商品を読み続けるために、市販のアンテナを2~4枚並べて設置した(写真2)。干渉の度合いを低くするため金属対応のアンテナ(タカヤ製)を選択したが、読み取り距離は約20cmと通常の半分程度になった。このため、スーツが空調の風で揺れるだけでアンテナからの距離が遠くなり、顧客が触れたと判断するようなこともあった。

 今回の実験では、顧客が商品に触ったタッチログも分析する計画である。売り上げは少なくても触れられる回数が多ければ、その商品は有望だといった判断ができる。このタッチログの収集で特に難しかったのは、ニットだった。ニットは厚みがあるため、アンテナの上に積み重ねると3~4枚程度しか読めなかった。店員は積み重ねる枚数を注意して整理するが、顧客はそんなことを意識しない。人気の商品ほど、顧客が触って読み取れない枚数まで積み重ねられることが多かった。

写真2 スーツのつり棚でのスマートシェルフ 棚の奥に4枚並べたアンテナが互いに干渉するため、読み取り距離が落ちた。ICタグは右袖のプライスタグのフォルダに入れた。

コンビニ業界
難しいレジ精算に挑む

 ファミリーマートと伊藤忠商事、東芝テックの3社は2006年1月30日~2月24日、東京都港区北青山のファミリーマート「伊藤忠ビル店」において、ICタグを使った一括レジ精算の実証実験を行った。レジ精算においては読み落としが許されず、ICタグの適用は一般に難しい。そこで専用のICタグシステムを開発し、運用を工夫することで実用化に近づけた。