複数地点へ大容量信号を効率的に伝送することが求められるメッシュ型ネットワーク。今回はメッシュ網の構成に不可欠で,波長多重した信号を波長単位でスイッチングできる,光クロスコネクト(OXC:optical cross connect)技術を紹介します。

 高速・大容量の光中継網は,2地点間を結ぶWDM*ネットワークからスタートしました。最近ではインターネットのトラフィック増に伴い,複数地点へ大容量信号を効率的に伝送するというニーズが高まりつつあります。そこでリング型やメッシュ型のネットワークが求められています。


図1●光クロスコネクトを使ったメッシュ型ネットワーク 光スイッチング技術の進展によって,光信号を電気信号に変えることなく経路変更が可能になり,リング型やメッシュ型ネットワークへの適用が始まっている。
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図2●OEO(optical-electro-optical)型とOOO(optical-optical-optical)型がある光クロスコネクト 光クロスコネクトには,電気的処理を行うTDM(時分割多重)スイッチを用いたOEO型と,光信号のまま処理を行う光スイッチを用いたOOO型がある。
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 リング型ネットワークでは,前回紹介しましたROADM*システムが主要な装置となります。リング型よりも豊富なスイッチ機能が求められるメッシュ型ネットワークでは,WDMで波長多重した信号を波長単位でスイッチングできる,光クロスコネクト(OXC)という技術が利用されます(図1[拡大表示])。

OOO型とOEO型の2タイプ

 波長ごとに経路変更できる光クロスコネクトは,複数地点への複雑なスイッチング要求にも,柔軟かつ高速に対応できる点が特徴です。

 光クロスコネクトには大きく分けて,光信号を内部で電気信号に変換して処理するタイプ(OEO:optical-electro-optical)と,光のまま処理するタイプ(OOO:optical-optical-optical)があります(図2[拡大表示])。

 OEO型は,TDM(時分割多重)型の電気処理スイッチを用います。VC-3*(50Mビット/秒)などのSONET/SDH*の伝送単位で光パスを再編成します。従来型の電気スイッチを用いるため,高速化に限界がある点が課題です。

 一方のOOO型では,光スイッチ*というデバイスを用いて経路を切り替えます。従来の電気処理型スイッチよりも,40Gビット/秒などの高速信号を処理する際に有利です。

 代表的な光スイッチは,光導波路*の中で熱光学的効果によって作動するPLC(planar lightwave circuit)型スイッチです。入力/出力数は1×2が基本であり,もっと規模を大きくしたい場合には複数のPLC型スイッチをマトリクス状に配列します。

 PLC型スイッチは実績・安定性ともに優れ,中小規模のスイッチとして用いられています。ただし多段接続すると光損失が大きくなるため,大規模スイッチの実現には課題が残されています。

 一方,別の形式の光スイッチとして3次元MEMS(micro-electro mechanical systems)型スイッチがあります。こちらは入力光を複数の微小ミラーで反射させ,光の経路を変更します。100×100以上の大規模スイッチの実現も可能です。

障害発生のう回路にも有効

 光クロスコネクトを用いたメッシュ型ネットワークは,伝送路に障害が発生した際に経路をう回させる目的にも有効です。ただし予備の経路探索に手間がかかり,障害回復のための手順が複雑になる可能性もあります。そこでメッシュ網にGMPLS*などの制御技術を適用することで,保守運用性を高めることが期待されています。

 次回は,WDM装置や光クロスコネクト,IPルーターといった機器を統一的に管理制御できるGMPLSを紹介します。


萩本 和男 NTT未来ねっと研究所 所長
織田 一弘 NTTネットワークサービスシステム研究所 第二推進P 高速リンクシステムDP