一般論として,仮想化技術を導入する背景を考えてみよう。従来のIT環境では,新たな業務やサービスが増える度に,次々とシステムの拡張やサーバーの増設が繰り返されてきた。この結果,多種多様なサーバーが乱立し,複数のOSやミドルウエアの,しかも複数のバージョンが存在する状況を招いてきた。当然,各々の環境ごとにハードウエアのメンテナンス,OSやパッチの管理といった様々な作業が発生していた。

 また,複雑化したシステムのために必要以上のハードウエアを導入したり,ときにはそれが不足したりするなど,様々な弊害ももたらされてきた(図1)。すなわち,従来のIT環境では,運用効率の低下(運用者にかかる負担・工数の増加)と機材投資の不整合が発生していた。

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図1●従来のIT環境。必要とされるシステム規模に合わせて柔軟に対応しにくいため,機会損失やコスト高が生じてしまった。

 このような多くの弊害を解消するのが,仮想化技術である。ハードウエアの利用率を最適化し,需要と供給の整合性を取る。そして,物理的な制約を考慮することなく,アプリケーションやサービスのために必要なリソース(システム規模)が必要なだけ利用可能になる。その結果,物理的な管理の最小化を図れる。仮想化技術は,これらの理想的なIT環境を実現する。