Linuxとは,本来はLinuxカーネルのことを指します。カーネルとはタスク管理やデバイスへのアクセス管理などをするOSの中核となるモジュールです。しかし,このカーネルだけでは実用的なOS環境とは言えません。

 ユーザーが使いやすいOSとして成り立つためには,各種ライブラリやユーティリティ・ソフトを加えて統合的なシステムを構築する必要があります。それらをパッケージとしてまとめ,さらにインストーラや独自のツールを追加して配布されているのがLinuxディストリビューションです。

商用製品はサポートを受けられる


表2 代表的なLinuxのディストリビューション
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 Linuxのディストリビューションには,大きく分けてフリーのものと商用のものがあります(表2[拡大表示])。

 商用ディストリビューションは,特定の企業や団体から有料で購入するものです。開発元のディストリビュータからサポートが受けられるほか,有料で販売されているアプリケーションやフォントが,いっしょにバンドルされていることがあります。

 代表的な商用ディストリビューションをいくつか簡単に紹介します。

●Red Hat(レッドハット) Enterprise Linux:レッドハット社が開発している製品で,商用ディストリビューションとして圧倒的なシェアを誇っています。価格はやや高めですが,リリース後7年間という長期間にわたるサポートを保証している点が最大の特徴です。大規模サーバー向けのAS,中小規模サーバー向けのES,デスクトップ向けのWSの三つのラインナップがあり,用途に合わせて選択できます。

●Turbolinux(ターボリナックス):ターボリナックス社が開発している商用ディストリビューションです。主に国内で開発しているので日本語環境やマニュアルが充実しているほか,便利な商用ソフトウエアが多数付属するなど,初心者にも扱いやすいディストリビューションです。サーバー製品とデスクトップ製品がありますが,最近はデスクトップ製品に力を入れているようです。

●SUSE(スーゼ) LINUX:ヨーロッパで有力な商用ディストリビューションですが,ノベル社が買収したのをきっかけに日本でも積極的な販売が始まりました。IBM社が強力に後押ししていることもあり,将来が注目されている製品です。サーバー向けとデスクトップ向けの製品があります。

●Miracle(ミラクル) Linux:ミラクル・リナックス社が開発しているサーバー用の商用ディストリビューションです。同社がオラクル社の系列会社ということもあり,Oracleデータベースを動作させるのに最も適した製品と言えます。最近では,ほかの用途にも力を入れており,特にSamba(サンバ)*に関しては非常によくメンテナンスされています。

開発への参加が可能なフリー版

 フリーのディストリビューションの特徴はもちろん無料なことですが,それ以上にオープンソースの利点を生かしたインターネットのコミュニティによる開発が挙げられます。コミュニティの参加者が協力しながら,より使いやすいものを作り上げていく形態で,開発者とユーザーの厳密な区別がありません。

 ここでは,フリーのディストリビューションとして有名なFedora Core(フェドラコア)とDebian GNU(デビアングニュー)/Linuxの二つを紹介します。

●Fedora Core:レッドハット社が撤退したフリー版Red Hat Linuxを引き継ぐ形でFedora Projectが開発しているディストリビューションです。Red Hat Linux開発者の多くが参加しており,先進的な機能が積極的に採用されています。

●Debian GNU/Linux:純粋なフリー版として活発に活動しているディストリビューションです。最大の特徴はdebパッケージと呼ばれるパッケージ管理システムで,Red Hat系ディストリビューションのrpmパッケージとの互換性はありませんが,より多機能で細やかなアップデートが可能です。

 ここで挙げた以外にも,特徴があるディストリビューションが数多く存在します。これらの中から選択する基準として,商用版ならではのサポートの充実度や機能を重視するのはもちろん正しいでしょう。その一方でフリーのディストリビューションには自分の好みに自由にカスタマイズでき,ディストリビューションの開発にさえ参加可能という捨てがたい魅力があります。これらの利点を勘案して,自分のニーズに合わせた最適なディストリビューションを選んで下さい。


●筆者:岩元 貴彦(いわもと たかひこ)
ホライズン・デジタル・エンタープライズ
サーバーマネージメントソリューション本部開発部 部長