■これまで,スナップショット機能を備えるストレージ装置は非常に高価だった。しかし最近は,SQL ServerやExchange Serverの数十G~数百Gバイトのデータをバックアップするのであれば,200万~500万円の予算で済むようになった。ただし,スナップショットには仕組みの全く異なる2つの技術が併存する。それぞれの方式の仕組みと,メリットやデメリットを正しく理解して,ストレージ装置を賢く選択しよう。

(中田 敦=ITpro



スナップショットでかなう夢

  • 瞬間バックアップ
  • 瞬時のバックアップ
  • 瞬間リストア

 ストレージ装置のスナップショットがかなえる夢は,サーバーに負荷をかけずに数十秒~数分で終わる瞬間バックアップと瞬時のリストアである。

 従来,スナップショット機能を備えるストレージ装置は非常に高価だった。しかし最近は,SQL ServerやExchange Serverの数十G~数百Gバイトのデータをバックアップするのであれば,200万~500万円の予算で済むようになった。

サーバーに負担をかけない

 スナップショットとは,ディスク・ボリューム全体を瞬間的に複製する技術である。ストレージ装置で実行すると,サーバーに負荷をかけずに,しかも一瞬で複製を取得できる。これが,ソフトウエア・ベースのイメージ・バックアップやレプリケーションと違う点である(図9)。

図9●ストレージ装置によるスナップショットの利点

 リストアも高速だ。過去の状態に戻りたいなら,スナップショットのボリュームを本稼働のボリュームに昇格させるだけでいい。とにかく短時間でバックアップ/リストアしたい場合,ストレージ装置のスナップショットが有力だ。

 スナップショットはストレージ装置内で行われる複製なので,他の媒体や装置にバックアップしたい場合は,別の仕組みが必要だ。

 具体的には,SANやiSCSI対応のストレージ装置でスナップショットを取った後に,別のサーバー(バックアップ専用サーバー)で複製ボリュームをマウントし,バックアップ・ソフトなどを使ってボリュームをテープなどの外部媒体にバックアップする(図9の上の図を参照)。このとき,ストレージ装置のパフォーマンスは低下するが,サーバーのCPUに負荷はかからない。

 なおスナップショットを使ったバックアップでは,システムやアプリケーションは保護できない。別に対策する必要がある。システムのダウンタイムを最小限に抑えるのであれば,クラスタリングが望ましいだろう。ある程度のダウンタイムが許容できるのであれば,イメージ・バックアップという手もある。

実現する技術に2種類がある

 スナップショットの詳細を説明しよう。ハードディスクの物理的な仕組みを考えると,何も書かれていないディスクに,他のディスクのデータを瞬間的に記録するのは不可能である。実は,ストレージ装置のスナップショットとは,「瞬時に複製が作られているかのように見せかける」という技術だ。

 また一口にストレージ装置のスナップショットといっても,全く仕組みの異なる技術が,同じ言葉で一括りにされているので注意してほしい。

 ストレージ装置によるスナップショットには,「スプリット・ミラー方式」と呼ばれる技術と,「コピー・オン・ライト方式」と呼ばれる全く異なる2種類の技術が存在する。そしてそれぞれに,利点と欠点がある。