ノーク・リサーチが実施している「中堅・中小企業のIT導入実態調査」も,日経BPのサイトでは今年で3回目の掲載となる。2006年もその調査結果を14回に渡って連載していく。

 この調査は,全国の民間企業約4000社(売上高5億円以上500億円未満でサーバーを導入している企業)を対象にアンケートを実施し,集計・分析したものである。業種は,組立製造業,加工製造業,建設業,卸売業,小売業,IT関連サービス業,サービス業(IT関連除く),その他の7業種。調査期間は2006年1月から3月で,有効回答社数は931社だった(図1)。

図1●回答企業の業種プロフィール

 調査結果の詳細は「2006年版 中堅・中小企業のIT/ソリューションの実態と展望」(ノークリサーチ2006年5月刊)に掲載している。興味のある方は弊社サイトでご覧いただきたい。サイトでは購入の申し込みも受け付けている。

 回答者属性では,売上高50億円以下の企業が50.4%と全体の約半数を占めている(図2)。全社のIT動向を統括できる立場の方に回答をお願いしているため,基幹業務システムを前提とした回答が中心となっている。

図2●回答企業の年商規模プロフィール


中堅・中小企業は半数以上がサーバー導入を検討中

 連載1回目の今回は,「2006年版 中堅・中小企業のIT導入実態」の概要を紹介するにとどめ,詳細な分析結果は次回以降に譲ることにする。

 今回の調査からは3つの傾向が読み取れる。

1.景気の回復が体感できるほど投資意欲は上向いてきた
 …中堅・中小企業の景気回復,「導入予定ありは過半数越え」
2.ITシステムの低価格化による買い安さ,品ぞろえ感の充実
 …サーバーは「全く新規に導入」が相変わらず高く47.2%
3.インターネット・インフラのデファクト化に伴うセキュリティ導入に積極的
 …9割近くが「ウィルス,スパムメール,スパイウェア等対策を実施している」
 
 1の景気回復には,2005年度におけるIAサーバーの出荷状況という裏付けもある。先日実施したベンダーへのヒアリング調査でも,まさに絶好調の実績と伸びを示していた。IAサーバーは,Webサーバーなど情報系インフラのプラットフォームとして新規導入されているほか,既存サーバーからのリプレース需要も盛んだった。IAサーバー市場は2006年度も10%程度の伸びが見込まれている。

 さて今回唯一取り上げるデータは,今後のサーバー導入予定だ。「導入を検討/計画している」という回答の比率は,明らかに上昇基調にあり,前年を上回る値を示している(図3)。

図3●サーバーの導入予定

 サーバーの今後の導入予定は,「導入の検討/計画/考慮」を合わせると55.5%と過半数を超えている。昨年と比較すれば導入意欲は確実に高まっていることが分かる。逆に「導入予定なし」は41.3%と,2005年と比較すると6ポイント以上落としている。

 次回は,ITソリューションとしてのアプリケーションの導入実態について,主にどういったアプリケーションが導入されているのか,導入はどこまで進んだのか,今後はどうなのか。これらを検証していきたい。

表●調査の要綱
対象企業 IAサーバー導入企業(オフコン,汎用機を一部含む)
対象の基準 年商5億円以上500億円未満の民間企業
※調査回答者は基本的に全社システムを統括している担当者に依頼
対象地域 全国
対象の選定 ノーク・リサーチ所有のデータベースから抽出
サンプル数 中堅・中小企業約4000社対象(有効回収票931件)
調査時期 2006年1月から3月
調査方法 郵送アンケート及びWebアンケート

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノーク・リサーチ代表。矢野経済研究所を経て1998年に独立し,ノーク・リサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意とする。