検索連動型広告(P4P)を利用するメリットとして、大きく以下の3つが考えられる。

1. 訴求効果の高い広告配信先サイト

 オーバーチュアおよびグーグルは、国内の主要な検索サイト・ポータルサイト(Yahoo! JAPAN、infoseek、goo、msn、Fresheyeなど)と提携関係を結び、検索結果ページの好位置(ユーザーの目につきやすい位置)へ広告を配信している。「スポンサードサーチ」、「アドワーズ広告」を利用することで、上記の検索サイト・ポータルサイトに掲載される。

2. 関連性の高さ

 検索キーワードにひもづいて掲載されるため、広告文面とユーザーの興味・関心との関連性が高い。そのため多くのクリックを誘導できるだけでなく、サイト来訪後の成果(「コンバージョン」:商品購入や資料請求など、サイト運営者の利益につながるなんらかのアクション)にもつながりやすい。

3. 優れたコスト・パフォーマンス

 ユーザーがクリックした時だけ料金が発生する「クリック課金システム」を採用しているため、露出回数をベースとした従来のインターネット広告に較べ、格段にリーズナブルに出稿することができる。

 しかし、P4Pが市場に広まる中で、3つめのメリットに対して問題が生じ始めている。そう、主要なコンバージョンキーワードの入札価格の高騰である。これにより、目標である獲得単価が増加してしまうのである。

 多くの競合が存在する市場では、これらキーワードの高騰がみられ、特に価格が高く、Web上で何らかの成果までたどり着ける商材ほど顕著に現れる。例えば、保険や不動産、消費者金融の業界では1キーワードの入札単価が1,000円を越すことも珍しくない。

 こういったキーワードの高騰を抑えるために、多くの企業は獲得単価を下げる努力を日夜繰り返している。たとえば、入札順位を変えたり、広告文を変えたり、リンク先を変えたり、キーワードを増やしたり……。このような効率改善は、「頭に浮かんだ商品やサービスについて検索を行うユーザー」に対しての訴求方法の見直しと考えられる。

 ここで発想を変えて、商材が頭に浮かんでいない段階からユーザーに訴求していってはどうだろうか?

 例えば保険市場の場合、保険加入前のユーザーへのアプローチが考えられる。つまり結婚、出産、軽い症状を検索するユーザーに対して保険の加入をP4Pを通して訴えるのである。ユーザーの商品購入の流れは

 問題認知 → 情報探索 → 代替品評価 → 商品購入 → 購買後評価

 としてP.コトラーのマーケティング概論で広く知られている。私が新たに提案するのは

情報探索の前の段階、つまり問題認知の段階へP4Pを通して訴求する方法である。

 これまでのP4P運用の概要はPMマトリックス(アンゾフの市場成長ベクトル)でいうなれば、情報探索の段階への市場浸透型戦略であった。

 今後のP4P運用の新しい展開は、問題認知を促す新たな市場へ展開していく「新市場開拓戦略」であると考えている。新市場には競合は存在しないため、入札価格の高騰という悲しむべき事象が発生しにくいと考えられ、コンバージョンの獲得単価を安く抑えられる可能性がある。

 この戦略を後押しするように、Googleが提供するコンテンツ連動型広告の精度が向上している。コンテンツ連動型広告の特長として、ユーザーと広告の接触時間が格段に長く、また検索という能動的行為を行う以前の、漠としたニーズを抱えたユーザーの注意を喚起することができる。これにより、ニーズが顕在化した直後の、モチベーションの高いユーザーに効果的に接触することが可能となる。

 上記の「新市場開拓戦略」によっても、コンバージョン獲得の単価低減につなげることができるのではないだろうか。


(アウンコンサルティング コンサルティンググループ 野上暁)





 本コラムは、アウンコンサルティングのサイト 「(((SEM-ch))) 検索エンジンマーケティング情報チャンネル」に連載中の「SEM特撰コラム」を再録したものです。同サイトでは、SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。