自分にとって興味・関心のないキーワードを検索することはありうるだろうか。例えば、株式投資に関する知識も興味もないユーザーが「株を買うための情報を知りたい」と考えるだろうか? そして検索エンジンで「株△買う」(△はスペースを示す、以下同じ)というキーワードを検索するだろうか? 起こりうることではあるが、その発生頻度は決して多くはないだろう。つまりユーザーが調べるキーワードには、彼/彼女の持つ特徴、あるいはバックグラウンドが潜んでいるのである。

 ユーザーが検索エンジンで調べるのは『事前に何らかの形で言葉だけを知り、これからその意味や周辺領域について知りたいと考えるキーワード』か『自分が既に知っていて、さらに深い情報を知りたいと考えるキーワード』であろう。前者はテレビや雑誌、Webページ等で最近知った情報をさらに詳しく知りたい場合である。後者は既にユーザー自身が既にそのキーワードを知っており、さらに多くの関連情報を求める場合である。すなわち前者はそのキーワードに対する「初心者」、後者は「中級者」「上級者」ということだ。

 またユーザーの興味の度合いも多様であり、「なんとなく調べている」人から「商品を必ず手に入れたい」という人まで幅広く存在する。さらに、情報が入るにつれ「安い商品が欲しい」「上質なアイテムを手に入れたい」「同好の志を見つけたい」等プラスアルファの欲求が顕在化する。これらの興味や欲求を巧みに察知したうえで、検索連動型広告を通じて適切な情報を提示し、ユーザーを自社の顧客へと変えることが必要である。

 ユーザーの「知識量」と「興味の度合い」はキーワードに顕著に表れる。

 先程の『株購入』の例を再び取り上げよう。例えば「株式△しくみ」や「株△買う」というキーワードを打つユーザーと、「日経225」や「逆指値」といったキーワードを調べるユーザーとの間に知識量の差があることは明白である。前者は「株」というものに対して知識が少なく、これからその仕組みや内容について知ろうとしている初心者が、後者は株式についてある程度知識を持っている人が検索するであろうキーワードだからだ。

 同じ初心者であっても、「株式△しくみ」より「株△買う」と検索するユーザーのほうが、株購入の意欲が高いであろうことが分かる。なぜなら前者は、単純に「仕組みを知りたい」と考えるユーザーも囲い込んでいるキーワードであるのに対し、後者は明確に「株を買いたい」と考えるユーザーが検索しやすいキーワードであるからだ。

 またユーザーは自分の知識の及ぶ範囲や興味の大きさが許容する範疇で「検索」という行動を起こし、情報を手に入れる。自分の知識や興味が受容可能なレベルよりも難しい説明をされても理解できず頭に入らないであろうし、逆に既に知っていることを詳しく説明されても、ユーザーはその話に興味が持てないからである。

 そのため、キーワードごとの検索ユーザーの特性を理解したら、次にユーザーに合わせた説明をすべきである。検索連動型広告のタイトル・説明文やランディングページをセグメントする必要があるということだ。初心者にはわかりやすく商品を説明し、中級者にはある程度の知識を踏まえた上での説明を行い、上級者には豊富な知識を応用させ、さらにメリットを得ようという誘い文句をかける、等の工夫ができるだろう。

 もしあなたが検索連動型広告を出稿中であるなら、ぜひ一度、出稿しているキーワードを見直していただきたい。「それぞれのキーワードはどんな人が検索するのだろうか?」「ユーザーに合ったタイトル説明文やランディングページを用意できているだろうか?」という観点からキーワードを考察することにより、新たな発見があるだろう。

 ユーザーを疲れさせず、飽きさせずに自社サービス利用までに引き寄せるためには、キーワードの裏に潜むユーザーの特性をつかみ、彼/彼女らに合わせた工夫を常に行うことが欠かせない。だがそれだけではなく、一見すると無機質なものに見えるキーワードに潜んだ、ある種の「人間臭さ」を発見する楽しさを体感してみることも、筆者としてはお勧めしたいところである。


(アウンコンサルティング コンサルティンググループ 岩瀬京子)





 本コラムは、アウンコンサルティングのサイト 「(((SEM-ch))) 検索エンジンマーケティング情報チャンネル」に連載中の「SEM特撰コラム」を再録したものです。同サイトでは、SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。