無線ICタグを消費者向けの商品に取り付けて利用する際に順守すべきプライバシー保護対策の枠組みを示したガイドライン。2004年6月に総務省と経済産業省が共同で策定した。

 ガイドラインが示すプライバシー保護対策の柱は大きく三つある。一つ目は、商品にICタグが付いていることを消費者に告知すること。すなわち、商品のどこにICタグが付いており、どんなデータが格納されているかを知らせなければならないとしている。

 告知の方法として、(1)商品の包装に表示する、(2)口頭で説明する、(3)ポスターなどで分かりやすく掲示する、の三つを挙げている。基本的に、商品自体にタグが付いていることを表示すべきだが、その補完手段として口頭説明やポスターによる掲示を使うのがよいとされる。

 ガイドラインの二つ目の柱は、ICタグを無効にする方法を消費者に知らせること。無効化の方法として、(1)商品に付いているICタグを取り外す、(2)ICタグに格納したデータを消去する仕組みを用意しておく、(3)ICタグをアルミなどの金属で覆う、などを挙げている。ICタグに格納しているデータを消去する仕組みはキルタグと呼ぶ。

 ここで注意すべきなのは、ICタグを無効にすることによって消費者または社会の利益が失われる可能性がある場合は、そのことも消費者に告知しなければいけないことだ。例えば、「牛肉のパックに付いたICタグを取りはずすと、生産履歴を閲覧できなくなる」、「携帯電話に付いたICタグを無効にすると、どの部品がリサイクル可能か分からなくなる」といったことを、消費者に知らせる必要がある。

 ガイドラインのもう一つの柱は、ICタグのデータをほかのデータと組み合わせることで個人が特定できる場合には、ICタグのデータを個人情報として取り扱う必要があること。

 例えば商品に付いているICタグのデータと、その商品を購入した消費者を特定できる氏名や住所といった個人情報を販売管理システムなどでヒモ付けしている場合、ICタグにIDしか記録されていなくても個人情報とみなされるので注意が必要だ。ICタグに、消費者の名前や住所など個人を特定できる情報を直接格納するときは当然、個人情報として取り扱わなければいけない。

 2005年4月に個人情報保護法が施行され、個人情報を取り扱う企業は、同法が定めた義務を果たさなければならない。(1)個人情報の利用目的を本人に明らかにしなければならない、(2)利用目的以外に個人情報を利用するには本人の同意を得る必要がある、(3)個人情報の漏えいや紛失を防止する仕組みを整えておく必要がある、などだ。加えて、個人情報の管理責任者を設置し、連絡先を公表する必要がある。

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本記事は2005年12月26日発行のムック「無線ICタグ活用のすべて」(詳細はこちら!)の記事を基に再編集したものです。