■マイクロソフトの「System Center Data Protection Manager 2006」は,ハードディスクをバックアップ・メディアとして使い,エンドユーザーによる復元操作を可能にした新しいタイプのサーバー・データ保護ソフトだ。
■活用すれば,ファイル・サーバーのバックアップと復元処理を大幅に効率化できる。その仕組みを解き明かすとともに,データ保護から管理・回復に至る機能を検証した。

(藤田 将幸=グローバルナレッジネットワーク)


 「System Center Data Protection Manager 2006」(以下DPM)は,ボリューム・ライセンス版が2005年10月3日に,パッケージが10月7日にマイクロソフトから提供されている。また,日本ヒューレット・パッカードがDPMを搭載したアプライアンス・サーバー「HP ProLiant Data Protection Storage Server(DPSS)」4製品を10月下旬に出荷開始した。

 DPMの利用には,「DPM本体を稼働させるためのサーバー・ライセンス」と「バックアップ対象のファイル・サーバーごとに用意するManagement License(DPML)」が必要になる。3台のファイル・サーバーまで保護できるパッケージ版の価格は,19万2000円(推定小売価格)である。

 同製品は,(1)ハードディスクを保存先にして,高速・高頻度でバックアップを取れる,(2)エンドユーザーがクライアントの操作で,サーバーのデータを回復できる——という特徴を備える。

気軽に使えない従来のバックアップ

 従来のサーバー・バックアップは,大容量のテープ装置に,データを保存する仕組み。長年使われてきたが課題は多い。

 最も大きいのは,バックアップからいざデータを復元しようとしたとき,時間がかかったり,失敗したりすることがある点だろう。テープ・バックアップでは,復元に際して,データを記録したテープ・メディアを探したり,テープを早送りしたりするなどの作業が必要である。

 テープ装置の障害やテープ・メディアの破損も珍しくない。対策として複数のテープ・メディアを順番に使うローテーションや装置のヘッド・クリーニングなどのメンテナンスが不可欠だ。

 第2には,バックアップ処理にかかる時間の増大がある。背景は,バックアップ対象データの大容量化だ。場合によっては夜間など業務が休止する時間帯に,バックアップ処理が終わらないケースが出ている。バックアップすべきデータは日々増え続けており,処理時間の増加傾向には歯止めがかからない。

 第3には,バックアップ・コストの高さが挙げられる。バックアップ・システムの設計および運用管理に関連する費用や負担は組織にとって大きな問題となっている。トレーニングを受けた管理者でなければ,着実に運用できない点がとりわけ大きい。

ディスク・バックアップ技術で解決

 DPMはこうした課題に挑んだマイクロソフトの新しいサーバー製品である(図1)。まず,DPMは,バックアップ・メディアにハードディスクを利用する。ディスクは,テープ装置に比べて扱いが簡単で処理が高速である。復元処理も同様だ。ディスクはランダム・アクセスで必要なデータをすぐ見つけられる。

図1●従来のバックアップの課題を解決するDPMの特徴
ハードディスク・ベースの高速なバックアップやシャドウ・コピーによる柔軟なバックアップ間隔指定,エンドユーザーによるデータ回復を実現する。

 バックアップ間隔をこれまでより頻繁にかつ柔軟に決めることも可能だ。DPMは,バックアップ・データの世代管理をシャドウ・コピーという仕組みで効率的に実現している。シャドウ・コピーのサイズはバックアップ対象より,小さいので頻繁にバックアップしてもディスク容量を圧迫しない。バックアップの最中も,保護対象のファイル・サーバーをエンドユーザーが使い続けられるという利点もある。

 さらに,DPMでは,前述のようにサーバー管理者が不在でも,エンドユーザーが必要なデータを自由に復元できる。Windows Server 2003に備わる共有フォルダのシャドウ・コピーで実現している機能だが,それを洗練して実用性を高めた。

 本特集では,このような特徴を備えたDPMを120日間限定評価版で検証した。今回は仕組みと導入方法を,第2回では管理機能を,第3回ではデータ回復機能を取り上げる。