無線ICタグなど最新のIT技術を使って未来型の店舗サービスの実現を目指す「日本版フューチャーストア・プロジェクト」を推進している経済産業省は2005年度に、百貨店やコンビニエンスストア、スーパーマーケットなど5業態で実証実験を行った。このうち丸井と婦人服アパレル大手のフランドルが2005年11~12月に実施したアパレル専門チェーンでの実験と、ファミリーマートなどが2006年1月末から1カ月間実施したコンビニでの実験について報告する。

アパレル専門チェーン業界
スマートシェルフの運用に苦労

 丸井とフランドルの実験は、紳士服と婦人服の個品にICタグを取り付け、それを陳列棚から取り出したときなどに、商品のこだわり情報や他の商品とのコーディネート情報を提供するものである。いわゆる「スマートシェルフ」による購買喚起の効果を検証する。「マルイシティ新宿」で実施した。

 丸井は紳士服のプライベートブランドである「ビサルノ」において、スーツと靴、ニット(セーターやカーディガン)を対象に実験した。こだわり情報の制作には、モデルを使って動画を駆使するなど、実験費用の大半をつぎ込んだ。「これまでの接客サービスにはないような“驚き”を演出することで、どれだけ購買喚起を図れるか」(丸井営業本部グループ仕入物流部部長の手塚茂氏)を調べるためである。導入効果の詳細は今後まとめるが、「ICタグのない他店舗などと比べて売り上げが10~20%程度増えたようだ」(丸井グループ経営企画部長の佐藤元彦取締役)という。

 フランドルはブランドショップ「ルスークプリ」において、商品の写真やサイズ情報などシンプルな情報を提供した。定番の紳士服と違い、婦人服は毎週といった単位で商品が入れ替わるため、動画などの制作はコストが合わないと判断した。フランドルは従来から個品にICタグを付けて商品管理を行っており、そのICタグをそのまま使って実験した。

顧客が手に触れたときに情報提供

 情報提供の仕組みとしてフランドルは、キーボードを持たないタッチパネル式のノートパソコンに小さな据え置き型リーダーを取り付け、商品のICタグを顧客や店員がかざす方法を採用した(写真1)。タッチパネル式端末は店員が接客ツールとして使ったほか、「混雑時には顧客が自らサイズなどを確かめるために利用してくれることも多かった」(フランドルの店員)という。フランドルは今回のシステムを、すぐにも実用化していきたい考えだ。

写真1 フランドルが採用した据え置き型リーダー タッチパネル式のノートパソコンで商品情報を調べられるようにした。