サイマル放送とは,「同時の」を意味する“simultaneous”と「放送する」を意味する「Broadcasting」を組み合わせて作られた造語で,同じ時間帯に同一の番組を複数のチャンネルで放送することである。

 当初は,ラジオとテレビの同時放送をサイマル放送といっていたが,最近ではアナログ放送からデジタル放送への移行期間において,アナログ放送と同じ番組をデジタル放送でも同じ時間帯に「同時放送」することをサイマルキャストと言っている。国内の地上デジタルテレビ放送では,2011年7月の完全地上アナログテレビ放送停波までの移行期間に対する対策として,地上アナログテレビ放送の番組と同じ番組を同じ時間帯に放送(サイマル放送)している。

 このサイマル放送は,総務省が定めた「地上デジタルテレビジョン放送の放送局免許方針骨子」において,以下のようにサイマル放送を義務化している。

3.サイマル放送の比率
 自ら行うアナログテレビジョン放送(補完放送を除く)と同一の放送番組の放送については,1日の放送時間中,3分の2以上の時間で放送が実施されるものであること。

 よって,国内の地上デジタルテレビ放送は,2003年12月に地上デジタル放送を開始後,2011年7月までの約8年間はサイマル放送が義務化されている()。

図 サイマル放送が続けられる期間

 ワンセグ放送においても,固定型テレビ向けの地上デジタルテレビ放送と同じ番組を同じ時間に放送(サイマルキャスト)しているが,これはアナログ放送からデジタル放送への移行期間としての対策ではなく,現状の免許が2カ国語放送やデータ放送,字幕放送と同じ「補完放送」と定義づけられているためである。したがって2008年の免許更新までは,ワンセグ放送のテレビ映像もサイマル放送となる。