海外から入ってきたモノが短期間で爆発的に普及した場合、的確に訳す日本語が充てられないまま、時には誤解を招きながらも、音読みがそのままカタカナになって日本語化してしまうことが多い。世界各国においても同様の傾向が見られるようだ。

 しかし筆者が携わる「テキストボックスに調べたい単語を入力し、出力された該当結果一覧を閲覧して適切な情報へたどり着く」という行為については、「サーチ(←Search)」というカタカナよりも日本語の「検索」という単語が定着し、常用されている。

 この「search」という言葉、英語圏ではごく日常的に使われている。あらためて辞書を確認すると、「捜す; 捜し求める」(三省堂「EXCEED 英和辞典」)といった意味で、“能動的に必要なモノを追い求める”といった感を持つ。ひるがえって「検索」を辞書で引いてみると、「書物・カードなどから、必要な事柄を探し出すこと」(三省堂「大辞林 第二版」)とあり、なにやら“屋内で地味に探しモノをする”といった比較的適用範囲の狭い意味を持ち、ポジティブ感はない。

 「検索」という行為と語感のずれが気にかかるところであるが、将来的には「検索」という単語に能動的なニュアンスが付け加えられてゆくのだろうか。日本で「検索」という言葉自体が日常的に使われるようになったのはインターネットが普及しはじめた90年代に入ってからと記憶しており、今後もその意味は変容する余地がありそうだ。

 さて、検索エンジンの雄、Google(グーグル)。現在でこそYahoo! やMSN も独自の検索エンジンをリリースして追撃しており、またAsk Jeeves など4位以下の技術革新も目を見張るものがあるが、数年前には検索といえばGoogle、というくらいに一世を風靡し、検索するという行為が「ググる」と呼ばれた(英語圏ではGoogleを動詞として利用した)こともあった。

 このように、ある行為やあるジャンルを代表するものとして、独自に生み出した言葉が認識されるようになれば勝ったも同然である。他の「創って勝った」企業としては、就職サイトの「リクナビ」がある。オーバーチュア「キーワードアドバイスツール」による2005年8月の検索数は、「就職:129,738回」に対して「リクナビ:579,272」。これはまさに、自らをカテゴリーの代名詞とし、就職/転職に替わる言葉を創り出すことに成功した例である。

 事象に名前を与えることは、古来、一部の影響力のある人間にしか許されてこなかった。それが現在、すべての人に可能な行為となった。インターネットの普及に伴い、そのスピードはさらに加速している。自ら言葉を創り出し、時代の鍵となれるチャンスは誰にでもある。そうやって創り出したキーワードは、それまでの汎用的な言葉とは比較にならない価値を持つであろう。


(アウンコンサルティング コンサルティンググループ 赫本 進)




 本コラムは、アウンコンサルティングのサイト 「(((SEM-ch))) 検索エンジンマーケティング情報チャンネル」に連載中の「SEM特撰コラム」を再録したものです。同サイトでは、SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。