■営業たるもの、お客様に「この人はプロだ」と思わせなければいけません。実はちょっとした受け答えで、お客様の見る目は変わってくるのです。プロが教える、プロとしての見せ方とは?
私のプロフィール紹介で、「プロの仕切り屋(ファシリテーター)として・・・」なんてくだりがあるが、そもそも「プロ」という言葉は曖昧なのである。
別に資格があるわけでもないので、「ここからがプロ」という技術の基準がない。 では、なぜプロと名乗れるかというと、「プロらしく見せることができる」からなのである。相手にそういう主観を与えられるかが、重要なのだ。
営業マンは、企業を代表する顔である。お客様から「この人はプロだ」と思わせることができれば,商談もプロジェクトの進行も非常に有利になる。しかも、相手に「プロだ」と思わせられるかどうかは、実はちょっとしたテクニック次第なのである。
顧客は結果より先に、受け答えで“プロ”と認識する
プロと思わせるためには、何より結果であるとみんな思うだろう。しかし、そもそも結果が出る前に勝負はついているのだ。
つまり同じ結果でも、プロとして信頼する人がやれば「やっぱりプロだからこうなるのだろう」となる。反対に、プロとみなされていない人がやると「やっぱりプロじゃないから問題がある」という評価になる。
定性的な評価の場合、特にそれは顕著だ。「プロ」という刷り込みができているか否かで正反対の評価になったりする。
「この人はプロだ」と刷り込まれるのは、結果よりも結果を出す前のコミュニケーション・プロセスの方の比重が大きい。お客様との具体的な“受け答え”で、プロかどうかの評価が決まり、結果の評価も左右される。
それでは,どのような受け答えが“プロっぽい”のか。実際に私が使っているテクニックを紹介しよう。
質問には質問を返せ
客「システムを自社運用してるんだけど、人権費もかかるし、アウトソーシングしたいんだよね。なにかいい方法ないかな?」 営業:「それならうちのデータセンターをご利用ください。運用マネジメントを全部アウトソーシングできますから、御社の場合年間30%はコスト削減できますよ」 |
お客様の質問には淀みなく機敏に答える。これが営業の鉄則とばかりに、お客様が質問を投げかけると、速射砲のようにバンバン明解な回答で返す営業マンは多い。
しかし実際は、“質問には質問で返す”という手法が、相手の信頼を高めるには有効なのだ。私も当然、自社の売り込みでお客様とやりとりする。そういう場合、お客様の質問にすぐには答えない、ということを心がけている。
客「ワークショップって、何人ぐらいでやると一番盛り上がるんですかね?」 私「盛り上がるとは、どういう状態をイメージしていますか? 活発な意見が出る状態か、結論がまとまりやすい状態か、それによって違ってきます」 |
ファシリテーションの技術とは「インタビューの技術」と言っていい。プロのファシリテーターとは、言ってみれば「プロの聞き上手」だ。
相手の質問をさらに細分化して、選択肢を与えて質問で返す、というテクニックである。これは相手の真意を把握していくのに有効な手法なのだが、同時に相手に「こちらの気づかないもっと深い視点で見ている」と思わせる効果があるのだ。
「こういうケースならこうですよ」と明解に言ってしまってもいいのだが、私はあえてそうすることで,“プロっぽい”印象を与えるようにしている。
私はこうした効用を意識して、よくこの手法を使う。だんだんと顧客のこちらを見る目が「さすがプロ」と違ってくるのが分かるのだ。もちろん、とてもせっかちな顧客に対しては使い分けてはいるが。
常に相手より深い視点を持っていることを印象づける
ITベンダーの営業の方と話していると、ただアピールがうまいか、質問するにしても直球ド真ん中の人が多い。だが、ときたま「なるほど、そういう視点もあったか」と感心させられることがある。そういう場合は、私もその人に対して「プロだな」と感じる。
先のアウトソーシングの商談の例で言うと、
営業「今運用に割いている人材をどのように再配置したいとお考えなのですか? それによって選択肢も違ってくると思います」 客「実は今開発のスタッフが運用まで見てるんだよね。だから、本来の開発業務がおろそかになりがちなんだ」 ベンダー「分かりました。では、運用業務を切り分けてアウトソーシングする領域を考えましょう」 |
こうすると、お客様との話も広がるし、相手に「深い視点を持っているな」と信頼感を与えることができる。
このような受け答えの積み重ねが“プロっぽさ”を演出して、あなたの評価を高め、より相手のホンネを引き出すことにもつながるのだ。
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