続・IP電話の夜明け前(20)広帯域音声は消費活動を活性化する(2003年3〜7月)
2003年3月から4カ月続いた「インキュベーション支援プログラム」に参加して、私たちは広帯域VoIPの価値とは何かを考え抜いた。そうして「悟り」を開いたのである。 私たちが得た結論は「IPネットワーク上で消費活動を活性化するインフラとなり得ること」という点であった。 なぜなら「ネットは、リアルを越える」からである。ネットワークを、リアル(現実世界)の代替手段としてとらえるのが、おそらく従来の一般的な認識だと思うが、そうではなく、むしろネットワークのほうが本来的に高い利便性をもつからこそ、利用が広がっていくものだと考えたのである。 禅問答のようになり申し訳ないが、今から順を追ってご説明申し上げるので、お付き合いいただきたい。 広帯域VoIPの音質は、従来の電話のそれをはるかに超える。リアルでの生活の場ではめったに経験しない至近距離での会話、いわば耳元での会話に相当するわけであるから、当然ではある。しかし、だからといって、それだけの高品位な電話音質を、用件伝達の用途だけに使うとすると、その価値は限定的といわざるを得なくなる。もちろん、これまでよりもはるかに鮮明に文言を聞き取ることができるという価値はある。リッチで楽しいコミュニケーションが、世の中のコミュニケーション機会を増やすであろうことも想像できる。しかし、こういったことが、要件伝達での価値を劇的に変換するものだと主張するとすれば、多くの方から冷笑を浴びるに違いない。 私達のたどりついた広帯域VoIPの最大の価値は、音質そのものではなく別のところにあった。冒頭に述べたコンセプト、すなわち「より豊かな消費活動、経済活動を促進する社会基盤を、リアルを超える音のコミュニケーションで担うこと」。それが、私たちの到達した結論であり、その後、具体化していく「eおと」の底流を支える考え方である。 消費行動を決めるモチベーションとは? 「eおと」の重要なコンセプトにいたる考え方を辿るにあたり、まず消費者がモノを買うモチベーションについての私たちの考察をご紹介させていただく。 成熟した消費社会では、何が購買モチベーションを決定しているのだろうか。日本は第二次世界大戦後、劇的な復興をとげ極めて豊かな社会を築き上げた。その復興の初期では、世の中全体がモノ不足であり、機能を満足するものを作りさえすれば売れる時代があった。冷蔵庫、洗濯機、テレビといった家電製品や、自動車など、戦後の日本人のとっての新たなモノたちが、私たちの生活を豊かにしてきてくれたことは間違いない。 時代は下って、現在はどうだろうか。もはや、モノを出せば売れるという時代ではない。コンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、毎月のように多種多様な商品が次々に発売されては消えていく。モノはなんでも作れるし、売られているという時代である。しかし消費にうまく直結しているとはいいがたい。 モノを提供する側から様子を見てみよう。モノを提供する側は、多様な消費財を提供できるようになっており、いわば「なんでも作れる」能力を持っているともいえる。私自身、ベンダーの開発者としていくつかの製品の開発にかかわってきたが、特に21世紀に入り、製品を作るための選択肢は極めて増えたと感じている。通常予測される範囲の製品であれば、仕様が決まりさえすればどんなモノでも作れる時代であることを実感している。 |
週末スペシャル
電子書籍をめぐる動きが活発に
システム開発者のための祭典「XDev」
続・ファシリテーションの技術
|