JavaOneは世界最大のJavaの開発者会議です。
毎年,サンフランシスコのモスコニセンターで開催されていますが,今年は5月16日から4日間行われました。ITproではJavaOne特集も組まれているので,読者の皆さんはすでにいろいろなニュースをご覧になっていると思います。
会場のモスコニセンターはサンフランシスコの中心部にあり,AppleのWWDCやIntelのIDFといったイベントも行われている展示会場です。モスコニセンターはノース,サウス,ウエストの三つの建物から構成されており,JavaOneはノースとサウスを使って行われます。
ノースとサウスは建物のほとんどが地下にあります。特にノースの地上部分は芝生が植えられており,ヤーバブエナ公園となっています。ランチの時間になると,ここでランチボックスを広げている参加者も多くいます。
JavaOneの会場は,通常のセッションの部屋以外に,サウスには基調講演(ジェネラルセッション)会場と,ランチ会場,ノースには展示場(パビリオン)があります。
ノースとサウスは地下でつながっており,ノースとサウスをつなぐ通路にはショップやカフェなどがあります。また,SunのシンクライアントであるSun Rayも多く設置してあり,時間の合間に多くの参加者がここからネットにつないでいます。
サウスの地上部分にはブックストアや,ゲームコーナー,プロジェクタなどが設置されており,憩いの場所となっています。ここにも,やはりSun Rayが配置されています。
このような場所でJavaOneは開催されているのです。
筆者もJavaOneに参加したので,今週と来週はJavaOneレポートをお送りします。でも,今週はちょっとJavaとは違うレポートです。
結成,Dukelele Band
皆さんはDukeleleという楽器をご存じでしょうか?
DukeleleはJavaのマスコットであるDukeの形を模したウクレレです。Javaの日本語処理などで著名な風間一洋さんが考案され,それを実際に作ってしまったのがProject Looking Glassの開発者である川原英哉さんです。
川原さんがDukeleleのプロトタイプをJavaの父James Goslingに見せたところから,あれよあれよというまに公式のグッズにまでなってしまいました。
はじめてDukeleleが公に登場したのが2005年に東京で行われたJava Computing 2005 Spring。その後,サンフランシスコのJavaOne 2005やJavaOne Tokyo 2005でも販売されました。
今年のJavaOneでは,このDukeleleをフィーチャーしたバンドがパフォーマンスを行ったのです。と,人ごとのように言っていますが,実をいうと筆者もその一員だったのです。
話は去年のJavaOneに戻ります。去年のJavaOneで,日本から参加された方たちが行ったのが,ゲリラライブです。
稚内北星学園大学 丸山学長を中心に,CTCの中村さんがピアニカ,そして川原さんと私がDukeleleを弾いて,スキヤキなどを演奏しました。私はこのためにDukeleleを日本から持っていったのでした。
そして,今年の4月。Project Looking GlassのメーリングリストでJavaOneの話題が出たときに,「今年はゲリラライブもないしDukeleleは持っていきません」と私が投稿したのです。それに対して,川原さんから「えーーー,持ってこられないのですか?」という反応が帰ってきました。
そんなに持っていかないことが問題なのかと不可思議に思ったのですが,そのときにはすでに秘密の計画が着々と進んでいたのでした。
ほどなく,川原さんからメールをいただきました。そのメールには「JavaOneでシークレットライブを計画しています」という内容が...
そのメールによると,初日のジェネラルセッションの直後にショップの隣でライブを計画していること,メンバーとして次の人たちが参加することが書かれていました。
- 川原英哉 Dukelele,Vocal
- 中村薫 ピアニカ
- Chet Haase キーボード
- Hans Muller ベース
- Mark Anenberg パーカッション
- 筆者 Dukelele
川原さんはProject Looking Glassで高名ですが,それ以外のメンバーもSunのJava Desktopチームに属しておりSwingやAWTを担当しているエキスパートエンジニアです。Mullerさんは去年東京で行われたJavaOne Tokyoでもセッションを担当されていたので,ご存じの方もいるかもしれません。
そんな中に単にDukeleleを持っているというだけで,筆者がメンバーに入るのはかなり気が引けるのですが,何事も経験なのです。
練習
練習といっても,川原さんたちのメンバーは米国,筆者は日本にいるので,一緒に行うことはできません。川原さんたちがXXXXの家で行った練習の様子を録音し,送っていただきました。
川原さんと実際にお会いできたのは前日の15日の夕方。他のメンバーはまだシリコンバレーからサンフランシスコに入っていないので,とりあえず2人だけで練習です。
とはいうものの,川原さんはJavaOneでProject Looking Glassのブースを持ち,また16日にはセッションも担当なさっているので,練習できる時間は1時間ほど。
とりあえず,曲の出だしと終わり方をチェックして,一度通しで練習しただけで終わってしまったのです。本当にこんなことで大丈夫なのだろうかと不安を残したままサンフランシスコの夜は更けていったのでした。
本番
バンドのライブはJavaOne初日の16日。午前中のジェネラルセッションの直後と,午後のテクニカル ジェネラル セッションの直後です。
ライブを行う場所はモスコネのサウスとノースをつなぐ通路にあるショップの横です。ジェネラルセッションから出てきてパビリオンに流れる人たちが見てくれるだろうというもくろみがあって,この場所を選びました。
ジェネラルセッションがまだ行われている9:30ごろに,メンバーがライブの場所に集まってきました。
川原さんと,中村さん以外のメンバーはこれが初対面です。とりあえず,自己紹介から。楽器の音を合わせたり,セッティングをしていたら,あっという間にライブの時間が迫ってきました。
演奏を予定していたのは次の4曲。カッコ内がもともと歌っていたアーティストです。
- This Love(Maroon 5)
- The Game of Love(Santana featuring Michelle Branch)
- I Don't Want to Missa a Thing(Aerosmith)
- Sunday Morning(Maroon 5)
ジェネラルセッションが終わったらしく,人がぞろぞろと移動し始めました。さぁ,Dukeleleバンドの本番です。
前説もなにもなく,いきなり演奏を開始。Dukeもやってきてくれて,隣で踊ってくれました。
演奏がはじまると続々と人が集まってきて,通路が通れないほどに。ところがこれが問題になってしまったのです。
2曲目のThe Game of Loveを演奏していたら,モスコネセンターの係の人がやってきてしまいました。通路を塞いでしまうのは消防法で禁じられているそうなのです。
結局,この場所で演奏は続けられなくなってしまい,2曲だけであっけなくライブは終わってしまったのでした。
場所探し
通路でライブをやることがまずいとなると,残された道は,ライブをあきらめるか,他の場所を探すかのどちらかです。もともと,2回のライブをやる予定でしたので,他の場所を探すことに。
通路を塞いでしまうのがダメということになると,ある程度のスペースが必要です。そこで,パビリオンでやっていいかどうかを確認したのですが,こちらもダメ。では,どこならいいかと係の人に聞いたところ,モスコネサウスの入口のところであればいいということです。でも,よく聞いてみると,サウスの建物の中ではなくて,建物の外。
それでも,演奏できなくなるよりはましなので,外で再びライブを行うことになりました。
再び,本番
テクニカル ジェネラルセッションが終了しても,この場所はあまり人が通りません。再び,Dukeもやってきてくれたので,人を集めるために演奏を開始しました。
演奏するコードをその場で決めて,中村さんがアドリブで演奏をします。うーん,かっこいい。
そしてある程度人が集まってきたところで,当初の予定の4曲の演奏開始です。
こうして,Dukelele Bandのライブは行われたのでした。本当に楽しく,みなで演奏させていただきました。それにしても,こんなに写真を撮られた経験は生まれて初めて。今後もこんなことはないでしょうね。
もちろん,JavaOneに参加するのはテクニカルセッションやBOFに参加して,新たな知見を得ることが主な目的です。でも,このように様々なギークたちとの交流も得難い経験なのです。
そして,JavaOneはそれが許される場所なのです。みな,本当にJavaOneに参加することを楽しんでいます。この雰囲気を私の筆力で表現するのは難しいので,機会があればぜひサンフランシスコのJavaOneに参加してみてください。
来週はJavaOneでのトピックなどをご紹介してきます。
著者紹介 櫻庭祐一 横河電機の研究部門に勤務。同氏のJavaプログラマ向け情報ページ「Java in the Box」はあまりに有名 |