写真1 X.org Foundationのサイト
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図1 XサーバーとXクライアントが協調して動作することでGUI環境を実現します
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図2 Xサーバーは,個々のウインドウの表示やマウス,キーボードからの入力を管理します
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図3 ネットワーク接続された異なるパソコン上で利用する
パソコンAのユーザーは,Xサーバーを介してパソコンBやパソコンCで動かしているXクライアントを利用できます。

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 「インストールしてみたけど,使い方が分からず途方に暮れた」「操作手順だけでなく,基本的な仕組みを知りたい」...。こうした意見にこたえるため,“Linuxの基本”を説明するコラムが復活しました。Linuxを操作しながら,基本操作と仕組みに関する知識を身に付けましょう。

 LinuxをはじめとするUNIX系OSでは,WindowsやMac OS XのようにOSとウインドウ・システム*が一体化*1しているわけではありません。UNIX系OSの上でウインドウ・システムが独立したソフトウエアとして動作することで,GUI環境を実現しています。UNIX系OSで使われるウインドウ・システムが,今回紹介する「X Window System」です。

X Window Systemとは何か

 X Window System(以下,X)は,米MIT(マサチューセッツ工科大学)のAthenaプロジェクト*によって開発されたウインドウ・システムです。現在は,「The Open Group*」の下部組織であるX.org Foundation(写真1[拡大表示])が開発を行い,オープンソース・ソフトとしてXを公開しています。2005年12月時点のXの最新版は,Xバージョン11リリース6.8.2*2です。

 XはUNIX系OSが普及する以前から,UNIXで動作する定番のウインドウ・システムとして広く利用されていました。そのためLinuxにおいても,当然のようにXがウインドウ・システムに採用されました。

 しかし,Linuxの主プラットフォームとして利用されているパーソナル・コンピュータ(以下,パソコン)には,Xの搭載(移植)に大きな問題がありました。パソコンの画面描画に使われるグラフィックス・カードなどが多種多様なため,限られたものにしかX用のデバイス・ドライバを用意できなかったのです。

 そこで,この問題を解決するべく,「XFree86 Project」という団体*3が結成されました。XFree86 Projectはもともと,パソコンに搭載されているx86系プロセッサに対応したXを提供する目的で活動を開始しました。具体的には,The Open GroupのXをベースに,パソコン用のグラフィックス・カードのデバイス・ドライバを組み込んだXを開発・提供するものです。その成果物が,「XFree86」です。LinuxのXといえば,XFree86のことを意味する状態が続いていました。

 XFree86は2004年,バージョン4.4.0においてライセンスが変更され,宣伝条項が追加されました。これで,Linuxに適用されているランセンスのGNU GPL*と相いれない部分が生じることになりました。このため,Linuxディストリビューションの供給元の多くは,GNU GPLと矛盾しない「X.org」を採用しました。X.orgは,XFree86のライセンス変更直前のソース・コードをベースにX.org Foundationが開発していることから,パソコンで使われている主なカードに対応します*4。特殊な仕様を持つもの,あるいは市場に出始めたばかりの最新のものでない限り,パソコン上でXを利用できます*5