5月の連休明けには毎年,3月期決算の発表が相次ぎます。ITproでも「決算大特集」というコーナーで,主要なIT関連企業の2006年3月期決算の概要を紹介しています。

 決算発表のニュースは,パターン化しています。まず,売上げと利益の前期比を取り上げます。売上げが増えれば「増収」,減れば「減収」,同じく利益が増えれば「増益」,減れば「減益」です。次に,増収・減収,増益・減益の理由を解説し,最後に来期の業績予想へと続きます。ニュース・バリューのある企業の場合,この後で,部門別業績などの細かい情報が続きます。最近だと,米国会計基準ではどうなるか,などの情報を追加することもあります。

 3月期決算の企業は,6月に入ると有価証券報告書を金融庁長官へ提出します。有価証券報告書には貸借対照表,損益計算書,キャッシュフロー計算書,製造業であれば製造原価明細書などの情報が記載されています(これら有価証券報告書の内容は各企業のWebサイト,あるいは金融庁のEDINETで参照できます)。

 有価証券報告書が提出された時点では,その内容がニュースになることはめったにありません。決算速報との重複が多くなりますし,記者(特にIT関係)には有価証券報告書をじっくりと読む習慣があまりないからです。マスコミが有価証券報告書の内容を紹介するのは,「経済誌が話題の企業を特集記事で取り上げる」,「ライブドアやカネボウのように粉飾決算が発覚した場合に,後追いで有価証券報告書を確認する」,それに「投資指南の解説記事」などに限られています。

 ITproの業績&業界動向サイトでは現在,この有価証券報告書を素材にしたIT関連企業の業績分析を検討しています。決算速報というフロー情報は,基本的に企業側の発表内容に基づいています。法律違反になるような「虚偽情報」が無かったとしても,決算速報の発表では都合の良い情報だけを公表して,都合の悪い情報を伏せている可能性はあります。

 そこで,有価証券報告書が発表された時点で,決算速報での発表内容をじっくり検証しようというわけです。確認対象には,例えば,「劇的なV字回復が単なる数字のトリックだった可能性はないのか」,「減益理由は公表されているもの以外には存在しないのか」,「来期の業績予想は果たして現実的な数字なのか」,それに「大規模なリストラを実施したA社の従業員数と人件費総額はどのように推移しているか」などが考えられます。

 企画の細部は,公認会計士などの専門家のご協力を得ながら詰めていく予定です。読者の皆さんも「有価証券報告書で,こういった点を調べてほしい」などのご意見があればお寄せください。企画の参考にさせていただきます。