図3 営業用システムを社内インフラ上に共存させる理由
図3 営業用システムを社内インフラ上に共存させる理由
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高橋くん:
営業一部のIT推進委員。営業マンとして働く一方,システム部と協力して部内のネットワーク・システムの面倒を見ている。
島中主任:
システム部主任。社内ネットワークを運用管理する中心人物。各部署のIT推進委員からの声を社内ネットに生かすよう活動している。

 ○×商事では,ホームページ公開,全社員のメール送受信,社員のインターネット閲覧——の用途ごとにシステム管理部門がルーターでQoS制御*を施しており,快適に利用できる環境が整っている。

 ローカル・システムを社内に新しく構築する場合は,その利用法をヒアリングして,全社インフラに与える影響度を検討する必要がある。一般的には,(1)コスト,(2)具体化したい内容,(3)既存環境への影響——といった観点から検討することになる。仮に,アクセス回線を共用したシステムで,代理店向けの営業用システムに障害が発生すると,全社員のメール配信やインターネットを利用した業務全般に大きな影響が出る。こうした危険性も考慮する必要がある。

高橋:じゃあドメイン名はどうなるんですか? やっぱりこれも専用のドメイン名を用意した方がいいんですか?

島中:ドメイン名は,全社ドメイン名のサブドメイン*を使う方がいいね。これには二つのメリットがある。一つは,情報システム部で運用しているDNSサーバーで両方のドメイン名を一括管理できる点。もう一つは,全社ドメイン名には会社名が使われているから,代理店から見たときに安心感がある点だ。

高橋:そうですか。せっかく,営業サービス用にカッコいいドメイン名を考えていたんだけどなあ…。

島中:今回のサービスは,○×商事が代理店,つまり社外に向けて提供するので,ドメイン名が会社を代表することになるんだ。だから,新しく専用のドメイン名を利用するとしても会社の承認が必要になるね。

高橋:残念! あきらめます。

どこまで社内インフラを活用するか

島中:次は内側に目を向けよう。つまり,新しく構築するシステムで,既存の社内インフラをどこまで使うのかという点だ。そもそも今回のシステムは営業部門専用だから,社内インフラと完全に分離してもいいはずだよね?

高橋:はい。営業部門からアクセスできればいいので。他の部署からアクセスしてほしくないという気持ちもちょっとありますし…。

島中:他の部門からアクセスできなくてもよくて,セキュリティを高めることが最優先事項だとすると,全社インフラから切り離したネットワークを構築するのが一番手っ取り早い(図3[拡大表示]の左)。でも,使い勝手はよくないよ。

高橋:どうなるんですか?

島中:本社にいる営業部員は,全社インフラとローカル・システムを使い分けるたびにIPアドレスと接続先のL2スイッチを切り替えなければならなくなる。さらに,IP-VPN*で接続している全国の拠点からはサーバーにアクセスできなくなってしまう。

高橋:それは困ります。今回のシステムは,全国の営業所にいる社員も含め,社内の全営業部員が使えることが条件なんです。

島中:そうだったね。そうすると,全社インフラとローカル・システムは同じネットワーク上に共存させることになるな(図3の右)。


●筆者:佐藤 孝治(さとう たかはる)
京セラコミュニケーションシステム データセンター事業部 東京運用監視課・責任者
社内,社外のシステム・インフラ導入業務を経て,現在はデータ・センターの構築・運用管理に従事している。