LANスイッチなどのカタログを見ていると,機器の性能を示す項目に「ワイヤー・スピード」という用語を見かけます。この用語は,売り文句として使われていることが多いようです。「ワイヤー・スピードを実現したLANスイッチ」とか「ワイヤー・スピード対応なので高性能」といった具合です。「スピード」という言葉が付いていることから想像すると,何らかの速度に関係する用語のように思えます。先ほどの売り文句も考慮すれば,何となく速そうなイメージです。でも,本当にそうなのでしょうか。

最大数のフレームが流れる

 答えを先に言ってしまうと,ワイヤー・スピードとは理論的に考えられる最大の数のフレームがケーブルに流れているときの状態を表す用語です。つまり,伝送速度やスループットのように,○○Mビット/秒といった速さを表すのではなく,フレームが流れている状態を指す用語と考えるべきです。

 伝送速度が決まっている回線にできるだけ多くのフレームを流すには,フレームのサイズを最小にする必要があります。イーサネットならMAC(マック)フレームの最小サイズは64バイトなので,この64バイトのフレームがケーブルに最大限にびっしり詰まって流れているときが,ワイヤー・スピードというわけです。具体的にどれくらいの数のフレームが流れるかというと,10Mイーサネットの場合は,1秒間に1万4881個です。100Mイーサネットなら,その10倍の14万8810個になります。

 LANスイッチのような機器のカタログに「ワイヤー・スピード対応」と書かれているのは,ケーブルから流れ込んでくるフレームが,理論的に考えられる最大値になっても対応できるということです。LANスイッチは,入ってきたフレーム一つひとつに対して転送処理をします。フレーム中のあて先MACアドレスを見て,そのあて先MACアドレスのコンピュータがどのポートの先にいるかを判断し,そのポートにフレームを送り出します。一口に処理といってもこれだけの作業が必要です。

 この作業をいかに高速に処理できるかで,LANスイッチの性能が決まります。そして,ワイヤー・スピードの状態,つまりその回線が単位時間当たりに流せる最大数のフレームをLANスイッチが受け取っても,フレームを滞りなく処理できれば,そのLANスイッチは十分な処理性能を持っていると言えます。これが「ワイヤー・スピード対応」の意味するところです。

機器の処理性能がわかる

 また,LANスイッチが備えるすべてのポートがワイヤー・スピードでフレームを受信しても,遅延することなく処理できることを「ノンブロッキング」と表記したりします。機器内部でフレームを待たせることなく(ブロックせずに)処理できることから,このように呼ばれます。

 これらの用語を知っていると,機器の性能を調べるときの参考になるでしょう。