ADSLやFTTH(fiber to the home)の普及によるアクセス回線の速度増加や,それを利用した映像配信など大容量コンテンツの登場によって,通信ネットワークのトラフィックは年を追うごとに増加しています。
総務省の報告によれば,インターネットのトラフィックは2005年7月時点で,1年間に約2倍のペースで増加。現時点のブロードバンド・ユーザーのトラフィック総量は約500Gビット/秒と言われ,2006年5月にはついに1Tビット/秒を超過するという予測もあります。法人向け専用線サービスを合わせれば,既に1Tビット/秒を超えているかもしれません。
このように爆発的に増加するトラフィックを支えるのが,光技術を用いたコア・ネットワークです。コア向けの光技術は,時代とともに高速・大容量化が進み,様々な技術が誕生しています(図1[拡大表示])。
メトロとバックボーンの2段階で構成
コア・ネットワークの実際の構成例と,そこに使われる光技術を紹介します。コア・ネットワークは,大きく分けてメトロ・ネットワークとバックボーン・ネットワークの2段階で構成します。
まずは,アクセス回線の収容局を結ぶメトロ・ネットワークに,アクセス・ネットワークのトラフィックが集められます。これは,市内や県内のネットワークに相当するものです。最終的には,複数のメトロ・ネットワークを集約するバックボーン・ネットワークへとトラフィックが流れ込みます。
メトロ・ネットワークは,かつては600Mビット/秒のSDHシステムで構成していました。90年代後半からは,トラフィックの増加と技術の進展によって,都市間をリング状に接続し帯域を有効活用できる,10Gビット/秒,2.4Gビット/秒のSONET/SDH*の導入が進みます。
現在では,1本の光ファイバに複数の波長で多重して,より多くの信号を送るための波長分割多重技術(WDM)*やROADM*という機器が登場し,実用化が始まっています。
ROADMは,WDMシステムによって多重化された光信号を,そのまま波長によって分岐・挿入できる装置です。分岐・挿入する波長を変えることで,ネットワークを再構成できます。光のまま信号を扱うことで,使いやすさと経済性の両立を実現しています。
光信号処理,イーサネットとの融合も進む
一方のバックボーン・ネットワークも,WDMシステムを基本として構築します。最近では約1Tビット/秒の信号伝達が可能なWDMシステムも登場。2.4Gビット/秒や10Gビット/秒といった高速信号の経路を切り替えられる光クロスコネクト(OXC)*などの開発が進んでいます(図2[拡大表示])。
ROADMやOXCのように,高速光信号を処理する技術は,コア向け光技術の一つのトレンドです。光スイッチ技術,光合分波技術,光増幅技術などが関連する技術です。
光技術だけではなく,LAN/WANの主役となったイーサネットとの親和性を高くすることも,コア向け技術の重要なテーマです。例えば,イーサネットとSONET/SDHの信号の混在が可能なNG SONET/SDH*と呼ばれる装置も登場しています。
ネットワーク全体を効率良く管理するための技術開発も進んでいます。WDM装置や光クロスコネクトとIPルーターを統一的に管理制御できるGMPLS(generalized multiprotocol label switching)*がその代表です。GMPLSでは,IPルーターと光クロスコネクトを連携することで故障時の自動復旧も検討されています。より信頼性の高いネットワーク・サービスが提供可能になります。
次回はIPパケット,イーサネット・フレームのコア・ネットワークでの転送方法について紹介します。
萩本 和男 NTT未来ねっと研究所 所長 山林 由明 NTT未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部長 福徳 光師 NTT未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部 光処理方式研究グループ 主任研究員 |