写真1 各店舗の陳列情報をデータベース化して閲覧
写真1 各店舗の陳列情報をデータベース化して閲覧
携帯電話の内蔵カメラで撮影した店舗の画像データを蓄積し,パソコンで閲覧できる。
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 チョコレート菓子の老舗メーカーであるメリーチョコレートカムパニー(以下メリーチョコレート)は,店舗販売システムのIT化推進の一環として,第3世代(3G)携帯電話を活用した画像レポート・システムを店舗に順次導入している。各店舗の商品の陳列状況などを携帯電話の内蔵カメラで撮影してサーバーに送信することで,データベースに格納するシステムである。

 売り場の陳列方法の違いによって,商品の売れ行きに差が生じるのはPOS(販売時点情報管理)データの分析から分かっていた。同じ商品を扱っているにも関わらず,商品の陳列によって売り上げ商品の構成比が異なってくることがある。では,どのような商品陳列を行うと売り上げに反映するのか。店舗の営業担当者や販売員は,自分の経験則に基づきながら試行錯誤を続けるしか方法がなかった。

 新システムにより,画像データを本部や全国の支店でリアルタイムに把握できる体制を整える(写真1)。これにより販売実績が上がった商品陳列の“成功事例”を全店舗で共有し,売り上げのさらなる向上を目指す。

本部と売り場との情報共有を目指す

 メリーチョコレートは,2005年10月に創業55周年を迎えた。百貨店内など全国に約160店舗を構え,チョコレートを中心としたギフト菓子を販売している。全国に広がる販売店舗網の情報集約と販売の強化に貢献しているのが,IT技術を活用した販売管理システムである。

写真2 メリーチョコレートのチョコレート菓子
写真2 メリーチョコレートのチョコレート菓子
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 同社はPOSデータ収集のため,1996年にタッチパネル式のハンディ・ターミナルを使った「MAPS」(Mary’s POS System)を導入した。ハンディ・ターミナルにはPHSをつないで,センターと情報の送受信を行う。販売状況を解析しながら戦略を練るためのデータを蓄積し,収益に貢献してきた。

 2005年4月,IT化をさらに推進する目的で第4次業務システムと位置づけた「MASCOT」(Mary's Advanced Shop Communication Terminal)を導入した。約1カ月かけて,約160店舗のシステムを入れ替えた。

 従来のMAPSシステムでも,POSデータの収集はもとより,発注や出退勤管理,棚卸時の在庫報告,売り場での伝票作成などの機能を備えていた。MASCOTでは,これらに加えて店舗側から販売日報や業務連絡を簡単に送信できるようにした。そして最大の機能強化ポイントは,集約したPOSデータを元にした販売情報を店舗側でも閲覧できるようにした点である。これにより,店舗と本部とがリアルタイムに情報を共有することが可能になった。

PHSから携帯電話に移行し画像データの送信を実現

 システムの入れ替えにともない,通信手段をNTTドコモのPHSから3G携帯電話のFOMAへと移行した。NTTドコモがPHSサービスを終了する方向であることを公表していたことから,将来性があり高速で大容量のデータのやり取りが可能な通信プラットフォームとしてFOMAを採用した。

 このFOMAの高速大容量通信の特性に着目して2005年9月から順次導入を始めたのが,FOMA端末のカメラ機能を使って撮影した店舗画像を送信し,センター側でデータベース化するシステムである。これまで,店舗状況をビジュアルで確認したいという営業担当者や本部スタッフの要望は強くあった。このため,デジタルカメラを店舗に持ち込んで撮影し,パソコンからメールに画像データを添付して送信することもあった。しかし実際には手間がかかるため,一部のスタッフが自主的に行う程度であったという。

 画像送信システム導入の経緯について,総務部 システム担当 マネージャーの津田稔氏は,「携帯電話の内蔵カメラを使って写真を撮影することが念頭にあった。そのため,端末にはデータ通信専用のカード型端末ではなく,通常の携帯電話型端末を導入した。一人1台近くまで浸透している携帯電話であれば誰もが操作に馴れており,販売員がすぐに使い方をマスターできる点も考慮した」と説明する。