先日,筆者の地元紙であるワシントンポスト紙に「米Googleが企業向け検索ビジネスを模索しはじめた」という記事が掲載された。この記事の中でも筆者が特に興味を持ったのは「Googleが企業ユーザー向けに,米Oracleや米Cisco Systems,米Salesforce.comなどのプログラムが管理する情報を検索できるソフトウエアを発表した」という下りである。パートナ企業の中にはビジネス・インテリジェンス(BI)ソフトのベンダーであるカナダCognosも名を連ねている。これはある意味,Googleが企業向けデータベースの領域に進出し始めたということではないだろうか。

 これに関連して筆者は最近,Webサイト「Red Herring」に掲載された「Google Boosts Business Search(Googleはビジネス検索を進化させる)」(該当記事)という記事も読んだ。この記事には,最近発表された「Google OneBox for Enterprise」というアプライアンス製品を使って,企業のあらゆるデータをGoogleの標準インターフェースによってセキュアに検索する方法が記されている。また記事には,Cognosのマーケティング・マネージャであるPaul Hulford氏の発言が引用されており,Hulford氏は「顧客に対して,ビジネス・インテリジェンス・ソフトや営業支援システム,在庫管理ソフトの独自インターフェースを使用するよりも,Googleの簡単なデータ検索機能を使うように推奨する」と語っている。

 この記事ではさらに,Googleのエンタープライズ・ビジネス部門のゼネラル・マネージャであるDave Girouard氏の「企業はこれまで,業務アプリケーションにどれほど多くの資金を投入しただろうか。検索は,あらゆるアプリケーションを統合する要因になりうる」という発言を引用している。

 Googleは「OneBox for Enterpriseアプライアンス」を固定ライセンス料金で販売する。また,開発者やシステム・インテグレータ,ソフトウエア・ベンダーが独自のモジュールを開発できるように,製品の開発インターフェースを公開する予定である。これは素晴らしい方針である。これによって様々なアプリケーションが,フロントエンドにGoogleのインターフェースを導入できるようになるだろう。米Microsoftは「SQL Server 2005」の全文検索機能で大きく前進したが,Googleには及ばない。

 Googleが検索分野で主な競合であるMicrosoftや米Yahoo!に大きくリードしていることは周知の事実である。また世間では,「ブラウザがデスクトップに取って代わるだろう」と言われていし,今でもそう主張する人もいる。さらに数年前には,Oracleが世間を「データベースは電子メールを含めたすべてのデータを実行するのにふさわしいアプリケーションである」と説得しようとしていた。「ブラウザがデスクトップに取って代わる」といった主張やOracleの主張がすべて間違いであり,実は検索こそが正しい答えだとしたらどうであろうか。

 もちろん,検索だけでは対処できないアプリケーションもあろうだろう。それでも,企業システムのほとんどが,企業のどこかにあるデータを検索し,表示し,視覚化するという機能を必ず実装している。OneBox For Enterpriseの初期バージョンが期待外れであったとしても驚かない。しかし,もしGoogleが主要なソフトウエア・ベンダーやシステム・インテグレータ,ソフトウエア開発コミュニティの幅広い協力を得られたなら,OneBoxは間違いなく,企業にとって多くの可能性を秘めた魅力的な製品となるだろう。