若手部員 貴子さん
  無線LAN(IEEE802.11b)の規格上の伝送速度は11Mビット/秒だけれど,実際に使ってみると10Mビット/秒のイーサネットよりも遅いような気がするわ。  

若手部員 宇田くん
  そうかなあ。10Mイーサネット(10BASE-T)よりも11Mビット/秒の無線LANが遅いのは変じゃないかな。実際のスループットを実験で確かめてみよう。  


貴子:前回の実験では,無線LANの実効スループットは最大でも5Mビット/秒程度して出なかったわ。IEEE802.11bの無線LANは,最大伝送速度が11Mビット/秒のはずなのにどうしてなのかしら?

宇田:そうだね。数字のうえでは10BASE-T(テンベースティー)の10Mビット/秒よりも高速なはずだけどな。

貴子:じゃあ,無線LANと10Mイーサネット(10BASE-T)のどちらが速いか,実験で確かめてみましょうよ。

宇田:どんな実験をするんだい?

貴子:簡単な実験よ。2台のWindowsパソコンの間でファイルをコピーする時間を測るだけよ(図1)。

宇田:前回やった実験と同じだね。

貴子:そうよ。10Mバイトのファイルをコピーする時間を計測して,実効スループットを算出するのよ。

図1 無線LANと10Mイーサネットの実効伝送速度を測る
パソコン2台を組にして,10Mバイトのファイルをダウンロードする時間を測定する。

単純計算なら無線LANの方が速い

宇田:実験の前に,少し予想してみようか。

貴子:計算してみるわけね。

宇田:そうだよ。計算は単純さ。10M(バイト)÷10M(ビット/秒)=1秒だね。

貴子:あのね,ビットへの換算を忘れていますよ。それから,ファイルなどを表すときは1M=1024×1024,通信速度のときは1M=1000×1000よ。

宇田:あっ,そうだった。では計算し直し。10Mバイト=10×1024×1024×8=8388万6080ビットだ。

貴子:そうそう,これをコピーするんだから,10BASE-Tの場合は8388万6080÷1000万=約8.4秒ってところかしら。

宇田:無線LANなら,8388万6080÷1100万=約7.6秒ってことか。

貴子:さすがに,この単純計算ではだめかしら。宇田くんはどう思う?

宇田:前回の実験で無線LANの実効速度は5Mビット/秒ぐらいだったから,16~17秒くらい(8388万6080÷500万)かな。

貴子:私もそう思うわ。イーサネットの方はどう思う?

宇田:イーサネットの伝送速度は10Mビット/秒で無線LANよりも遅いんだから,1割ぐらい長く時間がかかると思うよ。18~19秒くらいかな。

貴子:普通に考えれば,そうなるわね。でも,私は10BASE-Tの方が速いと思うわ。10秒くらいかな。

宇田:どうしてそう思うんだい?

貴子:実際に無線LANを使ってみて,10Mイーサネットよりも遅いように感じたからよ。

宇田:本当にそうかな。規格上の伝送速度で比べれば無線LANの方が速いのに・・・。

 読者の皆さんの予想はどうだろうか。規格上の伝送速度は無線LANの方が10Mイーサネットよりも速い。でも,無線LANを実際に使ったことがある人なら,貴子さんが言うように無線LANの方が遅いように感じることが多いはずだ。では,さっそく実験結果を見ていこう。