■総務省と地方自治情報センター(LASDEC)が2005年12月に公表した「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」が反響を呼んでいる。ベンダーが同じ業務システムでも自治体間で経費に大きな差があるなど、自治体のITコストの実態が明らかになったためだ。個々の自治体がこの結果をどう受け止め、生かすべきかを探る。(黒田隆明)

※ この記事は『日経BPガバメントテクノロジー』第11号(2006年4月1日発行)に掲載されたものです。

 全国の1950市区町村の情報システム経費を白日の下にさらしたことで話題となった「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」──この調査の分析結果が、ITベンダー、シンクタンクなど11社・団体から一斉に発表された。2月28日に開催された総務省「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」でのことである。

 この調査は、総務省と地方自治情報センター(LASDEC)が、2005年9月から11月にかけて全国の市区町村に向けて実施したアンケート調査で、全1950団体から回答を得たもの。住民情報関連や財務会計、人事給与、電子申請など28システムを対象に、システムの属性(汎用機、クライアント/サーバー、Webシステム、スタンドアロン)、導入形態、構築・運用の費用、リプレース予定時期などを調査した。全国の自治体のITコストが横並びで公表されたのは初めてのことだ(図1および表1)

■図1 調査データの例──自治体規模や費用のほか、記号ながらベンダー名も公開
調査データの例──自治体規模や費用のほか、記号ながらベンダー名も公開
※総務省「業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査結果」の一部を編集部で加工

■表1 「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」概要
調査対象 全国2172市区町村(調査票を配布した2005年9月時点)のうち、10月1日から12月31日までに合併する市町村を除く1965市区町村
回答率 100%(2006年3月3日時点で存在する全1950市区町村)
対象システム
(28システム)
住民情報関連/税/国保・年金/戸籍/選挙投票/自動交付機/福祉業務/学齢簿/財務会計/庶務事務/人事給与/文書管理/統計/土木積算/公有財産管理/統合型GIS/公営住宅管理/グループウエア/電子申請/電子調達/情報提供/システム間連携/情報公開/電子相談/電子申告/医療費助成/図書館/上下水道
主な調査項目 1.システムの属性・・・・業務主管課、担当者、移動年月、再構築の計画
2.システムの形態・・・・処理形態、パッケージの活用
3.システムの経費・・・・導入費用(ソフトウエア構築、ハードウエア)、維持費用(運用委託費用、保守委託費用:2001年度~2005年度分)
4.システムの委託先事業者・・・・開発委託者業者名、運用・保守委託業者名(公表資料では仮名で表示)
関連サイト 「共同アウトソーシング:業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査結果」(LASDEC)
「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」(総務省)

 特筆すべきは、記号による仮名ながらベンダー名も公開されたことだ。同じベンダーが担当したシステムでも自治体によってコストに大きなばらつきが見られることが分かるなど、関係者の間で大きな反響を呼んだ。