インターネット上の公開サーバーなどを狙った不正アクセスは後を絶たない。数年前と比べて,最近では不正アクセスの目的や攻撃パターンが明らかに変わってきている。以前の不正アクセスの目的は,サーバーに侵入してWebページを改ざんしたり,サーバー内の情報を盗んだりすることだった。つまり,不正アクセスの対象となるサーバーが攻撃目標だった。

 ところが最近では,不正アクセスされたサーバーが,攻撃の踏み台として使われるケースが増えている。サーバーに攻撃コンテンツやフィッシング用コンテンツなどを仕込み,そのサーバーにアクセスしたユーザーに被害を与える。サーバー自体ではなく,そのサーバーにアクセスするユーザーが攻撃目標なのである。

 このような場合,不正アクセスされたサーバーを運営する企業/組織は被害者であると同時に,ユーザーから見ると加害者になってしまう。被害は自分たちだけにはとどまらない。

 ユーザーにとっても脅威である。毎日のようにアクセスしていたサイトが,ある日を境に“攻撃サイト”に変わっている可能性があるからだ。セキュリティ対策の常套句である「信頼できないサイトにはアクセスしない」ことを守っていても被害に遭う恐れがあるのだ。

 公開サーバーを運営している企業/組織は,被害者にならないためだけではなく,加害者にならないためにも,サーバーのセキュリティには十分注意する必要がある。ユーザーも,セキュリティ・ソフトの利用や修正パッチの適用などを確実に実施して,“いつもアクセスしているサーバー”が“攻撃サーバー”に変わった場合でも被害に遭わないように備えておきたい。

 本稿では,ITproで最近掲載した不正アクセスに関する記事をまとめた。サーバーの運営者/管理者だけではなくユーザーも参考にしていただきたい。

いつものサイトが“フィッシング・サイト”に


米PayPalをかたる偽ページ
[画像のクリックで拡大表示]
 フィッシング詐欺が“全盛”だ(関連記事)。これに伴い,不正アクセスされたサイトに,フィッシング詐欺目的の偽サイト用コンテンツが置かれる事例が頻発している。そのためのツールも用意されているので,それほどスキルがない攻撃者でも,偽サイトを容易に構築できるという。

国内のWebサーバーがフィッシングに悪用,サーバー管理者は注意を [2006年4月13日]

「1つのWebサイトに,複数のフィッシング・サイトを構築するツールが出回る」,米Websense [2006年2月24日]

「SSHサーバーへの攻撃が増加傾向,侵入後はフィッシング・サイトに悪用も」---JPCERT/CC [2005年11月7日]

三重県が運営するサーバーに不正侵入,フィッシングやスパムに悪用される [2005年7月29日]

「フィッシング目的の『サーバー乗っ取り』が増えている」---米APWG [2005年6月6日]

いつものサイトが“ウイルス・サイト”に

 アプリケーション(Webブラウザなど)やOSに危険なセキュリティ・ホールが見つかると,セキュリティ・ホールを悪用するプログラム(コード)は必ずといってもよいほど作成され公表される。


悪質なWMF画像ファイルが置かれたWebサイトの例(F-Secureの発表資料から引用)
[画像のクリックで拡大表示]
 最近では,そのプログラムをWebサーバーに仕込んで,サーバーにアクセスしたユーザーに,ウイルスなどを無理やりインストールさせる事例が続出している。サーバーは,攻撃者が自前で用意している場合もあれば,正規のサーバーが不正アクセスされて,攻撃サイトに仕立て上げられる場合もある。

「受動的攻撃」に気をつけろ~その実態と対策~ [2006年4月10日]

「続きを読みたければこちらへ」,攻撃サイトへ誘導する偽ニュース・メールに注意 [2006年4月3日]

「悪質なWebサイトが最も多いのは米国」,米Websenseが“分布地図”を公表 [2006年1月24日]

狙われ続けるWMFのセキュリティ・ホール,悪質画像を置いたサイトへ偽メールで誘導 [2006年1月17日]

「狙われるWindowsの脆弱性,新しい攻撃手法が続々」,セキュリティ組織やベンダーが警告 [2006年1月5日]

「アサヒ・コム」の広告サイトに不正アクセス,ウイルス感染させるコードが仕込まれる [2005年10月20日]

静岡新聞のサイトにも不正アクセス,ウイルスを仕掛けられる [2005年5月18日]

価格.comがハッキングで閉鎖、閲覧者にウイルス感染の可能性も [2005年5月16日]