先日久々に実家に帰ってみたら、53歳の母がパソコンの前に座っていて驚いた。私が残していったロートルPCを使い、ゆったりとネットサーフィンを楽しんでいたのだ。私が実家にいた頃には見られなかった光景であった。聞けば、兄に教えてもらい、今では検索エンジンも使えるとのこと(兄がホームページに設定したYahoo! JAPANに限るが)。昨今、このような光景を見ることができるのは私の家だけではないようである。

 ネット上のビジネスにおいて、シニア層(50歳以上)をターゲットにしてよいものか? シニア層は可処分所得が高く、実際の消費性向という部分でも他の世代に比べて積極的であるといわれている。また絶対数の点でも、現在、日本の成人人口の半数は50歳以上であるので、先の質問に対しては自ずと答えが出るであろう。またシニア層は若年層と異なり、ブランドをスイッチするのに保守的な傾向があるので、ロイヤリティの高い顧客になる可能性が高いと考えられる。

 このような市場を見逃す手はないのだが、いかんせん「ネット」というフィルターをかけると、そこにシニア層は存在しなくなるのでは、といった見解が流布されており、オンラインでシニア層はターゲットになりえないというのが今までの定説であった。しかし、シニア層のネット利用率はここ数年間で大きく変わってきた。数年前まではシニア層全体のネット利用者の割合は1桁台であったが、現在では全国平均で35%を超え、都市部だけを見れば55%を超えている。さらにそのネット利用者の約8~9割は「ネット通販を使ってみたい」と考えている。

 このような状況下では、検索エンジンを利用しているシニア層ユーザーが多数いるものと推測することは難しくない。ネット上ではまだ未開拓感が強いシニア層顧客の獲得のため、検索エンジンマーケティングをシニア層に向けて展開していく良いチャンスであると考えられる。

 このシニア層への展開には、若年層・中年層と比べ、やはり特別な対策が必要であろう。

 例えば、シニア層が検索するワードは限られてくると思われる。「どこか国内で温泉でも……」と考えたとき、シニア層が「国内△旅行△温泉△箱根」(△はスペースを表す。以下同じ)や「温泉△激安プラン」とは検索しないであろう。やはり圧倒的にネット初級者が多いので、その検索リテラシーは低いと思われる。「温泉」あるいは「旅行」といった単一ワードや「温泉△旅行」など、いわゆるビッグキーワードで検索する可能性が非常に高い。しかし、ビッグワードを出稿し、上位に露出することはその広告主の費用対効果を下げてしまう可能性があり、悩ましいところである。しかし、前述した通りシニア層の可処分所得が高いこと、リピート率が高いことを考慮すれば、客単価の高い業種などは十分に費用対効果が得られるのではないだろうか。

 またシニア層を念頭に、ユーザビリティに配慮しインターフェイスを工夫することは、費用対効果向上にも一役買ってくれるであろう。巷間よく言われるとおり、使い慣れない人にとって使いやすいサイトは、結果的に誰にとっても使いやすい設計となっていることが多いからだ。あまり必要のないフラッシュが全面的に採用されていたり、マウスオンすることでプルダウンメニューが見えるといった作りであると、せっかくサイトに来てもらったシニア層の目の前に高い壁を設けることになる。そこを超えていけるシニア層に期待したいが、現実は難しいであろう。シンプルイズベスト。これがシニア層のお客様を囲い込むサイト作りの絶対条件になる。クリック単価が高いビッグワードをクリックされて、1~2ページ閲覧されただけで立ち去られてしまわないサイト作りが望ましい。

 オンライン上でのシニア層攻略は、その特徴から最初のハードルは高めだが、前述した注意点をおさえて、慎重に進めていけば可能なはずである。まずはシニア層のモデルケースとしてご協力いただくため、ご自分の両親に検索エンジンの使い方を教授してみてはどうか。

※ 文中、シニアマーケットに関するデータは、月刊「ネット販売」2004年10月号を参照している。

(アウンコンサルティング コンサルティンググループ 貝吹寛光)

 本コラムは、アウンコンサルティングのサイト 「(((SEM-ch))) 検索エンジンマーケティング情報チャンネル」に連載中の「SEM特撰コラム」を再録したものです。同サイトでは、SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。