写真1●MySpace.comのユーザー「Home」画面。ブログやメールのほか,映画,ビデオ,音楽などのさまざまなコンテンツが利用/共有できる[画像のクリックで拡大表示]
写真2●1日当たりページビュー(PV)推移。青がGoogle,赤がMySpace.com。4月半ば,MySpace.comは約240億PVに達し,Googleと拮抗した(米Alexa調べ)[画像のクリックで拡大表示]
写真3●MySpace.com「Music」サイトのトップ画面[画像のクリックで拡大表示]
写真4●MySpace.com「Video」サイトの人気ビデオ・ランキング画面[画像のクリックで拡大表示]
写真5●MySpace.com「Film」(映画)サイトのトップ画面[画像のクリックで拡大表示]

 4月初旬,米国のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)最大手「MySpace.com」(写真1)が年内にも日本に上陸する,というニュースが伝えられた。

 SNSと言えば日本で最大手は「mixi」。mixiは,2004年春にサービスを開始。会員数は2005年8月1日までの約1年半で100万人を突破。2005年12月で100万人増え,その後3カ月でさらに100万人増加。すでに300万人(3月1日現在)を抱える巨大コミュニティに成長している。

 ところが米国のMySpace.comの場合,その会員数は実に7400万人(4月26日現在)。mixiを遙かに凌ぐ,桁違いの規模である。今も新規登録数が破竹の勢いで伸び続ける超人気サイトで,米国では社会現象にもなっているという。しかしそれほどの規模であるSNSが日本でまだ知名度は低いのは不思議な感じである。

 そこで今回はこのMySpace.comについてレポートしてみる。MySpace.comとはいったいどんなサービスなのだろうか。米国で何が支持されているのだろうか。

「ページビューはYahoo!に次いで2位」

 米Alexaの調べによると,米国サイトの総合評価で,MySpace.comは,Yahoo!,Google,MSNに次ぐ第4位の人気という。またMySpace.comのページビューは今年2月ごろ150億PVで推移していたが,この4月半ばに240億PVに達し,一時Googleと同レベルにまで到達した(写真2)。comScore Media Metrixの調査では,2005年のMySpace.comのページビューはYahoo!に次いで第2位(The New York Times記事)。Googleの2005年検索語ランキングでは「MySpace」が1位という。MySpace.comは米国で確かに盛り上がっているようである。7400万人という会員数にも凄まじさを感じる。

ターゲットは若者,「エンターテインメントで心を掴む」

 米国でMySpace.comの知名度が一段と高まったのは2005年7月。同社がRupert Murdoch氏率いる米Newsの傘下に入ったのがきっかけと言われている(関連記事)。

 会員数もMurdoch氏がMySpace.comの買収を決めたころは現在の半分以下。買収後,3000万人以上の新規会員獲得に要した期間はわずか10カ月ほどだった。ものすごい勢いである。会員数の伸びはまだまだ衰えを知らず,今では月1カ月600万人の新規登録があるという。

 MySpace.comの買収にともない,News社がとった施策は大胆なものだった。News社は新たに設立したFox Interactive Media(FIM)事業にMySpace.comを移管。長年FoxSports.comでマネージャーを務めていたRoss Levinsohn氏の指揮のもと,Foxのエンターテインメント/ニュース/スポーツ分野のオンライン事業を包括的に組み立て直し,同事業で統括した。そこではMySpaceを最優先事業と位置付け,若者に焦点を当てたネット事業へと大改革を図った。

 MySpace.comはブログやメールはもちろん,グループ,フォーラム,クラシファイド広告,イベント情報などを提供する総合的なコミュニティ・サイト。とりわけエンターテインメント分野に重点を置いており,音楽(写真3),ビデオ(写真4),映画(写真5)といったコンテンツの利用/共有が可能になっている。

 例えば音楽であればインディーズ/メジャーを問わずさまざまなミュージシャンのサイトがあり,それらには,一般のユーザーと同様にプロフィールのページが存在する。またすべてではないものの,こうしたアーティストを自分の"友達"として登録することも可能。アーティストの音楽コンテンツを視聴したり,そのコンテンツをプロフィールのページに追加し,自分の写真やブログ,友人紹介情報などとともに公開できる。

 インディーズ系アーティストは,自分の音楽の販促活動が行える場として,メジャー・アーティストの場合はファンとの交流の場として利用しているという。実際ざっとブラウズしてみても大物と言われるアーティストが少なからず参加しているのが分かる。

 一方,一般の若者にとっては,これらアーティストのコンテンツを自分のサイトに取り込むことで,自分の"テイスト"を知ってもらえるというメリットがある。初めて会った人でも概ねどんな人物か雰囲気が分かり便利なのだという。米国の若者のあいだでは,ネットだけでなく普段の友人付き合いでもMySpaceが積極的に利用され,彼らにとって欠かせないツールになっているという。またリアルな世界で初対面の人と会った際も,以前のように電話番号ではなく,MySpaceのユーザー名を聞くというのが,今どきなのだという(The New York Timesの記事)。

 こうして多くの若者を取り込み,巨大なサービスへと変貌したMySpace.comだが,もともとは創業者が自らの考えに基づいて設計し,比較的小規模で運営していたサービスだった。