今年のゴールデンウィークはとても並びがよいせいか,5月1日・2日を休めば9連休になる。しかし,どこに行っても人ばかりで,外出するのも億劫だという方も多いかも知れない。筆者も人混みの中を歩いたり行列に並ぶのが大嫌いな質で,こんな時にこそゆっくりと本を読んだり,普段なかなか試すことができない技術的な実験などをやってみたいと思っている。

 今回は同じように考えている方のために,連休だからこそこの本を読んでみては?と思う本をご紹介しよう。

この連休にサーバー構築技術をしっかりと身につけたい

 連休だからこそ,普段なかなか時間が取れず身につけられなかった技術にチャレンジしたい,という方も大いに違いない。特にじっくりと腰を落ち着けてLinuxを使ったサーバー構築にチャレンジしたいという方には『CentOS 徹底入門』がよいだろう。

 CentOSは本連載でも何回か取り上げたが,Red Hat Enterprise Linuxから商標などを取り除いたフリー版のディストリビューションだ。パッケージのアップデートが早いことや,覚えたスキルをそのまま商用版であるRHELに適用できることで最近人気が高まっている。

 本書はそのCentOSについての初めての本格解説書ということもあり,インストールDVDもついているので,インストールから基本的なLinuxシステム管理の方法,各種サーバーサービスの管理まで丁寧に解説してあるので,システム管理自体を行うこと自体初めてという人でも取り組めるだろう。

 サーバー・サービスもDNSからメール,Webといった定番から,SambaやNFSまで取り上げられているので,じっくりと取り組めば3日間は楽しめるボリュームとなっている。

 著者はLPI認定試験の解説書などを多く執筆されている中島 能和氏だ。

『CentOS 徹底入門』
著者:株式会社クロノス 中島 能和 著
出版社:株式会社翔泳社
価格:4179円 (税込)
ISBN:4-7981-0939-8
URL:http://www.seshop.com/detail.asp?pid=6335

この連休に暗号化の技術を理解したい

 もう少し骨太な技術にチャレンジしたい方には,暗号化の技術を解説した『暗号技術入門』はどうだろうか。

 本書では,暗号の歴史から,認証,鍵と乱数,様々な暗号について,分かりやすい例を交えて解説されている。暗号に関する書籍の定番としては『暗号技術大全』(ブルース・シュナイアー著)があるが,これはさすがにゴールデンウィークが長いといっても大部過ぎて厳しいが,本書は分量といい,解説の平易さの点でもおすすめできる。

 セキュリティを理解する上で必須となる暗号化の技術をしっかりと身につけたい人におすすめしたい。

 著者は「YukiWiki」などの開発をされている結城 浩氏。

『暗号技術入門 -- 秘密の国のアリス』
著者:結城 浩 著
出版社:ソフトバンクパブリッシング
価格:3,150円(税込)
ISBN:4-7973-2297-7
URL:http://www.hyuki.com/cr/index.html

この連休にUNIXの歴史を紐解きたい

 我々が使っているLinuxも,さかのぼればUNIXとなる(実際にはLinuxはUNIXの直系ではないが)。『UNIXの1/4世紀』は,UNIXの誕生からの様々なエピソードを綴った貴重な資料といえる。

 UNIX(あるいはUnix)やC言語,様々なプログラムについて,UNIXにかかわった様々な人のコメントを交えて歴史が語られている。あまりにも沢山の人が登場しすぎるため,すいすいと読み進めるのは困難だが,温故知新という意味でおすすめしたい。

『UNIXの1/4世紀』
著者:サルス,ピーター・H. 著/QUIPU LLC 訳
出版社:アスキー
価格:2,520円(税込み)
ISBN:4-7561-3659-1
URL:http://www.ascii.co.jp/books/books/detail/4-7561-3659-1.shtml

この連休にコミュニケーションスキルを身につけたい

 ややLinuxの技術の話からはそれてしまうが,SEに限らず様々な仕事において重要なスキルが「コミュニケーション」だろう。コミュニケーションとは,自分の考えていることを相手に伝えたり,相手の考えていることを引き出すことだといえる。

 もちろん,このようなコミュニケーションのスキルは一朝一夕に身につけられるものではないが,第一歩を踏み出すための「気づき」が重要であり,そのためのちょっとしたヒントを与えてくれる書籍として『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』をおすすめする。

 人材教育コンサルタントとして活躍されている著者の田中 淳子氏による,客先でのプレゼンテーションを想定した基本編と,職場の先輩として部下や後輩を指導することを想定した応用編に分けて,丁寧に解説されている。

 雑誌に連載されていた記事をまとめた書籍ということもあって,一つ一つの章が読みやすくなっているので,気軽に読めるのがうれしいところだ。また,応用編にあるような部下や後輩とのコミュニケーションについてまとめた『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』も合わせておすすめしたい。

『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』
著者:グローバル ナレッジ ネットワーク 田中 淳子 著
出版社:日経BP社
価格:1890円(本体1800円+税)
ISBN:4-8222-2113-X
URL:http://coin.nikkeibp.co.jp/coin/nip/jissen/
 
『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』
著者:グローバル ナレッジ ネットワーク 田中 淳子 著
出版社:日経BP社
価格:1890円(本体1800円+税)
ISBN:4-8222-2149-0
URL:http://coin.nikkeibp.co.jp/coin/nip/jissen2/

 今回ご紹介した書籍の他にも,是非読んでほしいというものは沢山あるが,そのあたりはまた次の機会(夏休み?)にご紹介したい。是非この機会に書店に足を運んで,これはと思える一冊をゴールデンウィーク期間中に読んでみてはどうだろうか。

 ちなみに筆者はきちんと読み終わっていない『UNIXの1/4世紀』を読みつつ,「Turbolinux FUJI」をいじってみようと考えている。使用感などは次回お伝えしたい。

■著者紹介
宮原 徹(みやはら・とおる)氏
株式会社びぎねっと代表取締役社長/CEO。1972年,神奈川県生まれ。中央大学法学部法律学科卒。日本オラクル株式会社で「Oracle 8 for Linux」などのマーケティングを手がけた後,オープンソースのマーケティングを志し,2001年,株式会社びぎねっとを設立。「オープンソースカンファレンス」の運営など,様々なオープンソース・コミュニティの盛り上げ役として全国を飛び回っている。最近では,IPAの「未踏ソフトウェア開発事業」へのプロジェクト管理組織としての参加や,早稲田大学非常勤講師として若い才能を育てる活動も精力的にこなしている。(宮原氏インタビュー「会社に閉じこもらず交流しよう」)。