アプライアンスとは,特定用途向けのOSやサーバー・ソフトを,ハードウエアに組み込んだ形で提供される専用機器です。価格の安さや,インストールや設定が簡単な点を評価するユーザーが増えてきて,最近ではいろいろな製品が販売されています。

 企業ネットワーク向けのアプライアンス機器としては,Webサーバー,ファイル・サーバー,メール・サーバーといった汎用業務向けの機器,あるいはファイアウォールやウイルス対策ゲートウエイといったセキュリティ対策用のアプライアンス機器など,さまざまな種類があります。また,単一機能ではなく,Webサーバーとメール・サーバーといった複数の機能を一つのハードウエアに実装した製品も登場しています。

低価格で簡単に扱えるのが特徴

 汎用ハードウエアとサーバー・ソフトを組み合わせて構築するのに比べ,アプライアンス機器にはいくつかの利点があります。

 アプライアンス機器では,OSをはじめとするソフトウエアがあらかじめ組み込まれた状態で提供されます。このため,ユーザーがわざわざソフトを選択・購入したりインストールしたりする手間がかかりません。あらかじめ動作が確認された状態で販売されているため,トラブルが発生することもありません。

 汎用の製品を使った場合は,ニーズに合わせてCPUやメモリーといったコンピュータのハードウエア仕様を考慮する必要があります。これに対し,アプライアンス機器は開発元(もしくは販売元)が公表している性能値で簡単に判断できます。例えば,ファイアウォールのアプライアンス機器であれば,「同時最大12万8000セッション」といったカタログの指標を参考に,自社のシステムに合った製品を購入する判断ができます。

 アプライアンス機器のハードウエアやソフトウエアは,不必要な機能を削った独自のものを使用しています。これにより,汎用の製品を使った場合に比べて,パフォーマンスやセキュリティが向上します。結果的に,同価格かより安い価格で,高性能かつセキュリティの強い製品を導入することが可能です。

 アプライアンス機器では設定や運用が簡単になります。ほとんどの製品が簡易的な設定ウイザードや専用の運用管理ツールを標準で提供しており,設定や運用管理が楽になります。汎用製品のようにハードウエアとソフトウエアのベンダーが別ということがないため,一つのベンダーに保守を任せられます。万が一機器が故障しても,機器を丸ごと交換することで対応に時間をとられずに済みます。

メリットがデメリットとなることも


図1 アプライアンス機器のメリットとデメリット
メリットとして取り上げられる特徴は,デメリットとしての側面も併せ持つ。目的に合わせて適切な環境に導入するのが,うまく活用するポイントだ。

[画像のクリックで拡大表示]

 ただし,これらの特徴は必ずしもメリットばかりではありません。逆に欠点にもなります(図1[拡大表示])。

 製品のハードウエアやソフトウエアが固定されているので,手軽に拡張することはできません。例えば,ディスクやメモリーの容量を増やそうとすると,汎用品ではなくベンダーが指定する割高な専用品を購入する必要があったり,増設自体が不可能だったりします。システムの構成を変更したりして使わなくなった際に,ほかの用途に転用することはできません。

 簡易的な導入・運用の画面しか用意しておらず,詳細設定ができないケースもあります。また,ベンダーが指定しているソフトウエア以外をアプライアンス機器にインストールすることは,認められていないケースが多いようです。

 保守が1社に限定されるということは,不具合が発見された場合の対応がその会社次第ということになります。例えば,OSやサーバー・ソフトにセキュリティ・ホールが見つかったとき,そのベンダーからパッチ*などの対処法が提供されない限り,根本的な対策をとることができません。

特徴に合わせた使い分けが必要

 アプライアンス機器を導入する際には,ここで挙げたようなメリットとデメリットを考慮する必要があります。そして,汎用のハードとソフトを組み合わせた機器を導入するのと,どちらが総合的に得になるかを検討すべきでしょう。


●筆者:福士 祐樹(ふくし ゆうき)
ソリトンシステムズ パートナー営業本部
テクニカル・マーケティング兼コンサルタント