特定のアプリケーションの通信を規制するべきではないと考えているからです。 プロバイダは,ほかの通信サービスを提供する事業者と同様,「電気通信事業法」という法律の枠組みの中でサービスを提供しています。この電気通信事業法の中には,「通信の秘密の保護」と「検閲の禁止」という規定が含まれています。つまり,電気通信事業者は,ユーザーの通信に対して,検閲することなくその秘密を保護しなければならないわけです。この二つの事項は,日本国憲法にも記載されています。

 Winnyの通信規制に消極的なプロバイダがいるのは,特定のアプリケーションの通信を規制することが,この「通信の秘密の保護」と「検閲の禁止」という二つの規定に抵触する可能性があると考えているからです。

 例えば,Winnyの通信を遮断するという対処は,プロバイダが通信内容となる情報の適不適を判断し,その判断の基に通信をストップするということから「検閲」に該当する可能性があります。また,どんなプロトコルで通信しているのかをチェックすること自体が,ユーザーの通信の秘密を侵害していると考えることもできるのです。

 電気通信事業の監督官庁である総務省は,Winny通信の規制がこれら電気通信事業法に抵触するかどうか,まだ判断を下していません。


本記事は,日経NETWORK2006年5月号の『ビギナーズ・クエスチョン』および『NewFace』に掲載した内容の一部をITpro向けに編集したものです