ダイキン工業のCIOを務める二宮清・常務執行役員(IT推進・電子システム事業担当)

 エアコン大手のダイキン工業のCIO(最高情報責任者)を務める二宮清・常務執行役員(IT推進・電子システム事業担当)は、「人を育てるには、まずは信頼だ」と話す。

 ダイキン工業は、売上高の約半分を海外で稼ぐ。現在、ERP(統合基幹業務)パッケージなども活用しながら、欧州などの海外拠点での情報化を急ピッチで進めている。国内では、3日間という短いサイクルでエアコンの生産計画を立て、在庫を抑えながら需要の変動に即応できるようにする「ハイサイクル生産」を定着させたが、海外でも需給管理のレベルアップを狙う。2009年3月期までに、在庫保有日数を現在の水準から約3割短縮することを目標にしている。

 多くの拠点で情報化を進めるには、そのための人材が必要になる。二宮常務執行役員は、欧州やアジアなどの重要拠点に、3人の「地域CIO」と、地域CIOを支える人材を派遣している。「まずは信頼して任せること。『任せる→励ます→認める』というサイクルを回していくことが人材育成にとって重要だ。サイクルを回すうちに、本人の意識が高まる。最初から業務やIT(情報技術)の知識が十分でなくても、意識が高まれば、周りの人に聞きながら知識を身に付けられる」

 二宮氏が最近読んだお薦めの本は、大ベストセラーになっている藤原正彦著『国家の品格』(新潮新書)だという。「この本で、著者は論理と合理性ばかりではダメだと言っているが、IT部門でも同じ。システムのダウン回数だとか、セキュリティーだとか、バグ(不具合)の数だとか、そういう論理的な尺度だけで管理しようとしても、部員のやる気を喚起できない」

 二宮氏は、過去に電子技術研究所長、技術企画部長を務めるなど、研究開発部門での経験が長い。「論理と合理性」が必要な研究開発に精通しながらも、人間同士の信頼関係や、「飲ミュニケーション」による対話といった人間くさい部分を大切にしている。外部のITベンダーとの関係でも、情報の開示とそれによる信頼関係の構築を何よりも重視する。


Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・経営トップが日ごろ必要だと感じている情報が何であるのかを絶えずヒアリングし、どんな情報があれば経営上の意思決定に役立つのかを考える。

・新聞・雑誌などで論じられている「広い意味のIT」のなかで、経営トップが特に関心を持っているテーマや、疑問に思っている事柄について聞き取るようにする。

・他社のIT化の状況と、自社との比較を分かりやすく説明する。

・自社の関連会社や顧客が、情報化に関してどう考え、どうとらえようとしているかを素直に伝える。

◆ITベンダーに対し強く要望したいこと、IT業界への不満など
・まず、ユーザー企業が自社の実体をできるだけオープンにすべき。ITベンダーの方々は、それをしっかりと理解して、その上に立って提案をしてほしい。形式的な提案や検討は極力排除したい。

・ユーザー企業とITベンダーは、それぞれが信頼関係を築いていくように努力すべき。信頼関係なくしては、システム構築のための真の協業・協調は達成されない。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞、読売新聞、日刊工業新聞など
・文芸春秋、WEDGE、日経情報ストラテジー、日経ビジネス、日本の100人、電子情報通信学会誌

◆最近読んだお薦めの本
・『ウェブ進化論』梅田望夫著(ちくま新書)
・『情報科学的転回』西垣通著(春秋社)
・『漱石の転職』山本順二著(彩流社)
・『鉄道の文学紀行』佐藤喜一著(中公新書)
・『観自在』安岡章太郎著(世界文化社)
・『国家の品格』藤原正彦著(新潮新書)

◆仕事に役立つお薦めのインターネットサイト
情報処理推進機構(IPA)
流通システム開発センター
日本経済新聞社からのお知らせ
NEC「Wisdom」
田坂広志氏(多摩大学大学院教授)「風の便り」
Federal Chief Information Officers Council(米連邦CIO協議会)
Department of Commerce(米商務省)

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・情報処理推進機構(IPA)ソフトウェア・エンジニアリング・センター
・日本アスペン研究所「アスペンセミナー」
  編注)日本アスペン研究所は、「古典」を媒介にした知的交流の場を提供する活動を展開。会長は小林陽太郎氏。ダイキン工業の井上礼之・会長が理事を務める
・山城経営研究所「経営道フォーラム」
・日本能率協会「RD&Eマネジメント革新センター」
・電子情報通信学会

◆ストレス解消法
・気の合った仲間との「飲ミュニケーション」
・童謡・唱歌のふる里を訪ねての「一人旅」
・家族とのゴルフ