![]() ●JR常磐線高萩駅よりバスまたはタクシーで約10分。入場無料の見学設備「衛星通信館」がある。開館時間は午前10時から午後5時まで。近くにはNTTの衛星通信施設などもあり,さながらパラボラ銀座である。 |
1963年11月23日(日本時間),米国ダラスを遊説中の当時の米国大統領ジョン・F・ケネディが暗殺された。その日はくしくも,茨城県高萩市郊外の高台に建設されたKDD茨城宇宙通信実験所(現・KDDI茨城衛星通信センター)で初めて日米間の衛星通信実験が始まる日だった。
当日はケネディ大統領のメッセージが衛星経由で送られる予定だった。しかし,ケネディ暗殺で混乱したNASA(米国航空宇宙局)が近所の砂漠のような風景映像を送信し,これが衛星で送られた初めての画像となった。ケネディ暗殺のニュースは2回目の実験で届けられた。
この衝撃的なニュースは,直径20メートルの第1アンテナが受信した。主反射鏡と副反射鏡からなる「カセグレン型アンテナ」として世界で初めて作られたものだった。当時,通信衛星はまだ静止衛星ではなかったので,技術者が常に軌道計算や電波を探知して衛星を追跡し,パラボラ・アンテナを動かしながら電波をやりとりしたという。
最初の衛星通信から40年以上の時が流れた。JFKの悲劇を伝えた第1アンテナはすでに取り壊され,その跡には直径32メートルの第4アンテナが建つ。通信用パラボラ・アンテナとしては世界最大のものの一つである。
近年,ロケットの打ち上げ技術が進化し,通信衛星の大型化が進んだ。それにより衛星が送受信できる電波の強度は大きくなり,パラボラ・アンテナは逆に小型化できるようになった。現在では,新設されるパラボラ・アンテナは直径18メートル以下のものが中心である。
構内には約300本の桜並木やツツジが植えられ,シーズンには地元の人々が花見に訪れる。