最近,米Microsoftセキュリティ・ソリューションズ・グループのプログラム・マネージャであるMike Danseglio氏が「システムがルートキットなどの悪意あるソフト(マルウエア)に感染した場合,再構築しか解決法がない場合がある」と述べ。ニュースになった。Danseglio氏は,マルウエアは新しいぜい弱性や欠陥に迅速に付け込む極め狡猾な存在なので,どれだけ優れたセキュリティ対策ソフトを導入しても,システムを適切に守れないことがあると指摘している。

 筆者は,マルウエア対策としてシステムの再構築が頻繁に強いられるような状況になることが,仮想マシン技術の普及を促すのではないかと予測している。仮想マシン技術は,現在のシステム再構築の常識を一変させる可能性を秘めているからだ。

 現在,システムの再構築は困難で時間のかかるプロセスである。ある時点のディスク・イメージをバックアップしていればシステム復旧のストレスを大幅に減らせるが,そうだとしても,今日のバックアップ技術ではシステム再構築の時間短縮に限りがある。しかし,もし仮想マシン技術を常用していれば,ほとんどすべての種類の侵入被害にあっても,わずか数秒でシステムを復旧できる。なぜならば,仮想マシンをシャットダウンして再起動するだけでいいからだ。

 Microsoftや米Red Hatなどのベンダーは最近,仮想マシン技術を頻繁に宣伝するようになった。Microsoftは最近,仮想技術の無償提供や,Windows上で稼働する仮想マシン上でのLinuxのサポート開始などを発表している。これは,米VMwareが仮想技術の一部を無償提供するようになったことへの追従である。

 これまで仮想マシン技術のメイン・ターゲットはサーバーであった。しかし,マルウエアの脅威に最もさらされているのがデスクトップ・パソコンであることを考えると,セキュリティ対策としてデスクトップ・パソコン上で仮想マシン技術がもっと使われるようになるのではないかと考えている。

 もし仮想マシン技術にまだ触れたことがないのであれば,無償版を試してみるのがよいだろう。Microsoftの無償版仮想マシン「Virtual Server 2005 R2」の配布サイトはこちらで,VMwareの無償版仮想マシン「VMware Server」の配布サイトはこちらである。またこちらのサイトでは,VMware Serverで動作する「バーチャル・アプリケーション」のリストを閲覧できる。

 なお,Intel Macで動作する仮想マシン・ソフトも登場している。米ParallelsのWebサイトでは,「Parallels Workstation 2.1」のベータ版をダウンロードできる。Parallels Workstationでは,Windows XPやLinux,FreeBSD,Solaris,OS/2だけでなく,MS-DOSも利用可能である。